オマケ



 大晦日の前日。
 神宮寺社は意気揚々と携帯のボタンを押している。
 電話を掛ける場所は紫憧蓮の携帯だ。携帯越しで数コール鳴った後、蓮が出ると思ったが――。

『社さん、何かご用ですか?』

 聞こえる筈のない声がした。

「……ソノコエハアヤメサンデスカ」
『ええそうですが、なにか?』
「なんで菖蒲が出るの!?」
『社さんがお姉様の携帯に電話してくると思ったからですわ』

 その菖蒲の言葉に社は魂が抜けた。 

(黒菖蒲降臨……)

『社さん。お姉様は明日先約がありますので諦めて下さいね』
「先約…?」
『ええ。瓊毅さんと大晦日デートですわ』
「………」

(菖蒲が手回しして蓮と瓊毅のデートのセッティングをしたな…)

 黒菖蒲が微笑んでいる姿が思わず浮かんだ。そのまま挨拶もそこそこに電話を切る。

 社は無気力のまま自室のベッドに座った。
 と、直ぐに携帯が鳴った。

「ゲッ…」

 ディスプレイに表示された瞬間、思わず携帯を投げ捨てようとして思いとどまる。

「……もしもし」
『久しぶりどすなぁ、社』

 電話をしてきた人物は京都にいる社と巽の母だった。
 そしてそのまま、明日急遽東京につくという母の観光案内を約束して、今日は過ぎていった――。





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