始まりの出逢い




 二人の出逢いは、本当は此処なのに。お互い殆ど覚えいない。
 あの幼い頃の出逢いは肌寒い、冬の日だった…。

「姫さま! 姫さま!」

 姫付きの侍女が庭を歩きまわっている。幼い姫は活発な年頃、庭をハシャぎまわり侍女を困らせていた。

「くもいー! こっちだよー!」

 パタパタと可愛らしく走り侍女の雲居に手を振っている。すると一人の女性が廊下に現れた。

「姫、お遊びはお終いですよ。上様がお呼びです」
「かあさまっ」

 ぴょんと母に抱きつきニコニコと笑う。母の由姫は微笑みながら蓮の頭を撫でた。

「さ、綺麗な着物に着替えましょうね」
「うん!」

 母と雲居と共に部屋に入った蓮は着替えを済ませる。
 綺麗な銀色の髪に櫛を通し丁寧に梳く。くすぐったそうにしながらも蓮は大人しくしていた。

* *

「蓮、此方に来なさい」

 綺麗に整えた後、父の元へ行くと後方に控えるように一人の男性と幼い少年がいた。

 父の隣にちょこんと座りじぃっと少年を見る。長い黒髪に視線を移し「きれい…」と心の中で呟く。

 父が二人を紹介しているが全然頭に入らない。時折「姫」「守る」等の単語が聞こえ、少しは理解した。

 それでも、視線はずっとずらせない。少年の可愛らしさから今では思わず少女かと思っていた。

「…かわいい…」

 トテトテと父の側から離れ、少年の前に座る。

「おとうさま、このこかわいいね」

 そう言う彼女に父は笑い男性は苦笑する。優しく「これは男の子だぞ」と父に言われ、蓮は驚いてまたマジマジと少年を見た。

「おなまえは?」

 少年は困った顔で首を傾げる。男性が「瓊毅です」と言った。

「けいき……けいきっておなまえね」

 そっと瓊毅の頬に両手を添える。そしてニッコリと笑い。

「わたし、れんっていうの。これからよろしくね!」

 太陽のようなその笑顔を見て、瓊毅は何を思ったのかこくりと頷いた。

 これが、出逢い。
 そして数十年後二人は再び出逢う。

「私は紫憧 蓮っていうの、宜しく」

 運命の再会だった…。




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