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Other:偽りの輪舞曲/男主/マーガス


 久しぶりに会った二人の友は、昔と同じ熱血鈍感バカと女好きナンパ野郎のままだった。
 変わらない姿に安堵する部分もある。しかし主のことを思えば、ため息を吐きたくなる。
「アリシア様が報われる日は遠そうだな」
 我が主君にしてケールの若き領主は、不幸にも熱血鈍感バカのケイに惚れている。
 彼女の想いを汲める男に成長していてほしかったが願いは叶わなかった。ケイは相変わらずだ。
 俺の嘆きを聞きつけて女好きナンパ野郎ことマーガスは肩を竦める。
「時間の問題だと思うぞ。いい加減、あいつも気づく頃だろう」
 どうかな。ケイは今も幼い頃と変わらず、アリシア様を妹分としか見ていないようだ。好意はあっても下心がない。
「ブレトワルダの騎士になって変わったかと期待したんだが」
「察しが良くて女心に聡いケイなんか気持ち悪くないか?」
「いや……気持ち悪いとまでは」
 極端に変われという意味ではなく、欠点を克服する努力をしろと言ってるんだ。
 またしてもため息を吐く俺を見つめ、マーガスが真顔になる。
「お前も相変わらず不毛な恋をしてるようだな」
「え?」
「同姓が好きなんて理解はできんが、拒絶する気もないよ、俺は」
「な、なんで知って……」
 いや、そうか。ケイと違ってマーガスは他人の心の機微に聡いのだった。……不毛ね。返す言葉もない。
「全部、気づいてたんだな」
 彼がケールを離れたのは俺が原因なのだろうか。だとしたら俺はアリシア様に申し訳が立たない、と思ったが……。
「お前もケイを好きなんだろう。アリシアのそばで黙って見守ってたなんて、同情するよ」
「違うわ馬鹿者! 俺が好きなのはお前……ッでは、なくて、その」
「はあ〜、やっぱりそうか。そんな気はしてたんだよなぁ」
 くそっ、こんな手に引っかかるとは我ながら情けない。
「お前には報われてほしいんだけど、相手が俺とは。アリシアより不毛な片想いだな」
「当人に同情されたくない」
「何なら試してみるか? もしかしたら新しい扉が開けるかも」
「いらん!」
 筋金入りの女好きに期待などしない。俺の恋はもう諦めがついている。だからこそ、アリシア様には報われてほしい。
 不毛だと分かっていながら抑えかねる恋の切実さを、俺もよく知っているから。


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