Other:Shadow Hearts II/男主/ヨアヒム
「吸血鬼ってさ、確か不老不死なんだよな?」
俺がそう尋ねるとヨアヒムは「何のことやら?」って感じに首を傾げた。
「不老不死? 俺たちも人間と同じように歳をとるだらよ」
確かに吸血鬼と人間とでは時間の流れが違うかもしれないが、人間の感覚を生物すべてにおける一般常識とするのは傲慢であると真顔で告げられて思わず黙る。
なんだろう、ヨアヒムに正論ブッ放されるとものすごくムカつく。
まあでも言ってることは尤もだ。っていうかそうじゃなくて、俺はただ「吸血鬼ってのは人間よりずっと長寿で死ににくい性質なんだろ」と言いたかったんだよ。
「ヨアヒムでさえ400年近く生きてるんだろ? なのにどうしてそんなにバカなのかなと思って」
「そこはかとなく言葉に棘があるだらな……」
歳を重ねればそれだけ知恵もつくはず。吸血鬼の寿命が長いのなら彼は400年分の賢さと落ち着きを得て然るべきではないだろうか。
「そんな年月を生きてきたように見えないんだよなー」
「人間にとっては長い400年でも俺たちの体感では大して経ってないっち」
「けどヨアヒムの場合、外見の年相応でもねえじゃん」
「確かに俺は脳ミソまで筋肉のバカだらが……」
あっ、そこは自分で認めちゃうんだ。
「たとえバカでも、魔法も使えないウルよりはマシだっち!」
「ああ、うん。それ気にしてるみたいだから本人に言うなよ」
「つまりバカだとしてもブランカと同程度のバカということだっち」
どう考えてもヨアヒムよりはブランカの方が頭いいし、大人だと思うんだけど。
……そっか、逆だったのかもしれない。
犬の寿命は人間よりもずっと短いから、生まれて十数年でもブランカは大人なんだ。しかし吸血鬼は残された時間が有り余ってる。だから400年も生きてるヨアヒムでさえ“大人”じゃないんだ。
「要は400年かけてもそれっくらいしか成長できないってことだな」
「そういうことだら。……うん?」
バカにされてるの分かってないし、仮に分かってもべつに怒らないし。懐広くてある意味では大人かもしれないけど。
400年分の許容力があるからプライド捨ててバカでいられるんだろう。そう考えたら、ちょっと尊敬するよ。