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DA:女主/キャロル


 見習い区の片隅でひっそり読書に励む。明日はついに試練の日。緊張に凝り固まった私を友人たちも放っといてくれるからありがたい。
 ただ、そんな空気を少しも気遣うことなく近寄ってくる人もいる。
「何を読んでるんだ?」
 無遠慮に私の手元を覗き込んでくる影を見上げれば、そこにいたのはテンプル騎士らしさの欠片もない軽装のキャロル。今日は非番だったのかな。
「悪魔の分類を確認したくて、『創造主の御子たち』を読んでたの」
「またカビ臭いものを。クモみたいな奴だな」
「……えっ、なんで? 本にかじりつくからってこと?」
 講義にも使われる書物を馬鹿にするのだから、この人と来たら、まったく。
「明日はどんな悪魔に遭遇するのか考えると怖くて、予習せずにいられない。……欲望の悪魔だったらどうしよう」
「あー、倒して言うこと聞かせちまえばタダで望みを叶えられるな?」
「フェイドで悪魔と戦うなんて無茶だよ」
「お望みなら俺が試練に立ち合ってやるぜ」
「キャロルに見守ってもらうよりはカレンの方がいいな」
 彼の目を見ながら、あの兜を被ってないから気が抜けるのかもしれないと思う。
 表情が見えて、何を考えているのかちゃんと分かる。キャロルと話しているとテンプル騎士も人間なのだと実感できる。
 そんな彼は、私と目を合わせたまま突拍子もないことを言い出した。
「お前、カレンに惚れてるのか?」
「……ええ!? ま、まさか!」
 メジャイがテンプル騎士を好きになるなんて不毛な道を選ぶわけないじゃない。アメルに惚れてると噂のカレン自身は、その不毛な道を突き進んでいるみたいだけれど。
「それに私はどうせならカレンよりも……」
「そうだな。俺の方がいい男だし」
 自分で言うことだろうか。というか、キャロルがいいなんて言ってないのに。……か、顔に、出てたのかな……。
「キャロルは、私が試練を乗り越えられると思う?」
「乗り越えるために試練を受けるんだろ?」
「……うん」
 ずっとそれを夢見ていた。自分が生き残るためではなく、私はただ……テンプル騎士の手を煩わせず自分を律することができるようになりたいんだ。
 明日、私が正式にサークル・オブ・メジャイの一員になれたら。勇気を出して悪魔に立ち向かうことができたなら。
 きっと、日に日に中毒症状が酷くなってる彼を守ることもできるだろう。


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