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FF4:女主/エッジ/ダムシアン人


 迂闊にも風邪を引いてしまった。我ながら情けないことではあるけれど、エブラーナの気候に未だ慣れなくて油断したようだ。
 ダムシアンと違いすぎる。ちょっと雨に濡れるだけでもすぐに体調を崩してしまう。もう少し気をつけておかなければと自分を戒めた。
 私の家までお見舞いに来てくれたエッジさんは、さっきから枕元で何かの作業に励んでいる。
 色のついた紙を折っては引っくり返し、また折って、次々と形を変える紙が面白く、熱の引かないぼんやり頭でそれを見ていた。
「よし、できた!」
 彼の手のひらに現れたのは不思議な形をした紙の塊だ。何かを模しているようだけど、熱のせいかよく分からない。
「これは?」
「折り鶴、折り紙で作ったツルだ」
 久々だが折り方は覚えてるもんだとエッジさんはそれを矯めつ眇めつ感心している。
 言われてみるとあの細くて折れ曲がっているところは鶴嘴のようだし、両側に広げているのは翼に見える。
「でもツルには見えないですね」
「ま、まあそうなんだけどよ。見立ててるってことさ。快癒祈願に贈ったりするんだ」
 エブラーナでも薬草学は進んでいる。にもかかわらずこういった“おまじない”が一緒に残っているのは不思議な感じだ。
 私の故郷に、こういうものはない。病気になったら早く薬を飲んで治療しないと、弱った人はそのまま熱砂に呑み込まれて死んでしまうから。
「お前もツルを知ってんのか。砂漠にいるとは思わなかったぜ」
「砂漠にはいませんけど、湿地の方には冬になるとツルが来ますよ」
「へえ、なるほどねぇ」
 毎年、ファブールから西の越冬地に遙々飛んでくる。群れをなして空高くを飛ぶツルを見たことがある。細く頼りない体でホブス山を飛び越えるなんてと心から驚いた。
 そういった力強さに焦がれて、病気の快癒という願いが籠められるのだろうか。
「……折り鶴って、私にも作れますか?」
「おう。ガキにも作れるくらい簡単だぜ」
 治ったら教えてやると笑ってエッジさんは私の額に触れた。ひやりとした手の感触で少し熱も下がった気がする。それとも折り鶴の効果だろうか。
 快癒祈願……ではないけれど、起き上がれるようになったら私も、故郷のために折り鶴を作ってみようかな。


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