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FF4:女主/エッジ/ダムシアン人


 先程からエッジさんは不要な紙を集めては器用に折って謎の物体を作っていた。完成したものを軒先にぶら下げて満足そうに頷いている。
 ……なんだかその形が人のシルエットのようで、とても不気味に思う。だってここから見ると、まるで誰かが首を吊ってるみたいなんだもの。
「あの、それは何ですか?」
「ん? てるてる坊主ってやつだ。ダムシアンにはねえのか」
「初めて聞く名です」
 坊主ということは、やっぱり人間を模しているんだ。ますますもって気味が悪い。
 エブラーナの文化ではあるのだろうけれど、そんなもの我が家の軒先に吊るさないでいただきたいというのが正直なところだった。
 誰かを呪うアイテムにしか見えない。対象が私だったらどうしようかと思いつつ、エッジさんがそんなことをするはずないと頭を振る。
「魔除け効果でもあるのでしょうか」
 不気味がっているのがバレないようにできる限り愛想よく言ってみると、エッジさんは笑って私の隣に腰をおろした。
「魔除けじゃねえけど、明日が晴れますようにっておまじないさ」
 一緒に出かけるんだから雨が降ったら困るだろと彼は晴れやかに笑う。明日はエッジさん自らエブラーナ王国の観光スポットを案内してくれる予定だった。
 てるてる坊主は外の景色を眺めている。空を睨み、雨雲を監視しているようにも見えてきた。
「明日ちゃんと晴れたら墨で目を入れてやって、神酒を供えて川に流す。願いを叶えてくれた礼ってわけだ」
「へえ……ちゃんと供養まで行うんですね」
「それだけ想いが籠ってるからな」
 この国は雨が多いという。だから大切な日が雨で台無しにならないよう、祈りをこめて“てるてる坊主”を吊るすのだそうだ。
 我が故郷ダムシアンで雨といえば待ち望んだ天の恵みだから、雨が降らないでほしいなんて祈りはちょっと予想外だった。
 不気味に感じていたものが、そんな話を聞くとなんだか健気で可愛らしく思えてくる。
 期待を背負って空を見上げる人形に、私も願をかけることにした。
 私と出かける明日をエッジさんが“大切な日”だと言ってくれたのが嬉しかったから。てるてる坊主、どうか明日を天気にしてください。


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