キスなんて、奪うもんだと思っていた


強引だとか乱暴だとか言われようが、
いつも俺はお構い無しに女の唇を奪う。
女の方だって、そんな態度で、まんざらでもなさそうだった。
いつもの俺だったら、いつも通り、無理矢理に唇を奪って居たはずだ。

「ラディッツ…どういうつもり…?」

抱いた腕の中で、名前の肩が震えた。
今日の今日まで、仲間としか認識していなかった名前を、
俺は酒に酔った勢いで抱きしめていた。
どういうつもりなんだ…?俺は心の中で自問自答して居た。

「目、閉じろ…」
「……嫌」

拒絶されたのは、初めての事だった。
いつもの俺だったら、いつも通り、気にせず唇を奪って居ただろう。
それが不可能になったのは、名前の瞳に涙が浮かんで居たからだった。

「おい…泣くんじゃねえ」
「だって…」

名前はうつむいて震えながら、小さな拳を俺の胸元へ投げた。
「私の気持ちも知らないで…」そう呟くと、次々と涙がこぼれ落ちた。

「おまえの気持ち…?」
「そうよ!…鈍感!」
「ああ…?」
「いくら片思いでも、いきなりキスなんて嫌!」

頬をつねられ、悪戯っぽい瞳を見下ろすと、俺は目が覚めたようだった。
距離が近すぎて、今まで気がつかなかった思いに、ようやく気がついた。

「片思い…?じゃ、ねえって…」
「ラディッツ…?」

キスなんて、奪うもんだと思っていた。

その涙を指で拭い、俺は耳元で囁いた。

「好きだ…。
だから、もう、泣くな…」

紅潮した可愛い頬に、そっと、口づけた。



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