キスをする前にしておきたいこと




「おはよう、名前」

目を開けて真っ先に飛び込んで来たのはシャワーを浴びてすっきりした様子のゴジータさんの姿。朝からシャワーだなんていつもより早く起きて修行でもしていたのだろうか。というより上半身裸なので目のやり場に困る。

何故だか私も素っ裸なので布団を手繰り寄せながら見苦しい身体を見せないように起き上がるとベッドサイドに手を付いたゴジータさんが額にキスをするものだからそれはもう目をパチパチさせるしかなかった。

「覚えてないか?」
「なに、を…?」
「昨日の夜」
「昨日の、夜…」

あっ、と思った時には昨夜の記憶が徐々に蘇って来ていて頭の中が羞恥で溢れかえる。
ああ、そう言えば昨日はゴジータさんと一夜を共にしたのだった。そして後半の記憶がぼんやりしているのはきっと私が寝落ちしてしまったからだ。

「身体は平気か?」
「は、はい。平気です」
「やり過ぎたな」

大きな掌で腰を撫でながら言うゴジータさんに息が詰まる。ドキドキしっぱなしで目を合わすことすらままならないのにまさか身体を重ねる日が来るなんて。昨夜の私ときたら随分と思い切ったものだ。

「こ、これは…夢…かな」
「そう思うか?」
「たぶん…」

夢にしては目の前にいるゴジータさんはやけにリアルだ。でも今の私は頭がふわふわしていて昨夜のあれが夢なのか現実なのか判断することすら困難。だって現実味がなさ過ぎる。相手はあのゴジータさんだよ。

混乱していると表現するのが無難な状況なのにそのくせ落ち着いている自分が酷く怖い。まるで本当に夢だとでも悟っているようで。

様子を伺いながら更に私に近寄るゴジータさんと、その場からぴくりと動くことも出来ない私との距離がついに埋まってしまう頃、心の中で「どうか夢ではありませんように」と願うことでいっぱいいっぱいだった。

「俺も、昨日は夢を見てたらしい」
「それは…偶然、ですね」
「そうだな」

くすっと笑ったゴジータさんが私の口を優しく塞いで目を瞑る。

ゆっくりと目を開けた時に、うそ、やだ、夢にしないで、と言う勇気が無い私にゴジータさんは「夢ならとっくに覚めてるだろう」と囁いた。


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