キミに溺れて、窒息死。




私が悟空と出逢ったのは、夜道で痴漢に追いかけられた時だった。私の「助けて!」と叫ぶ声に反応してくれたかのように、悟空は夜空から舞い降りて来た。そして片手だけで痴漢をボコボコにやっつけてひたすらカッコイイだけかと思いきや、物足りなそうな表情で振り返ったのが何だか可愛いらしかった。筋骨隆々とした体付きとは裏腹に、少年のような無邪気な笑顔で。私は思わず、悟空に一目惚れしてしまったのだった。

 出逢った日から数週間が経って、悟空は私の部屋に遊びに来るようになった。気づけば、おうちでデートが当たり前になっていた。二人きりでまったりと過ごす時間が、いつからかかけがえのないものになっていた。食事を終えてソファーでリラックスしている時に、私は悟空と手を繋いで話すひとときが一番好きだ。その日も、いつも通りに二人でソファーに腰かけて、手を繋いで。悟空が傍にいるだけで、うっとりとしてしまう。

「ねえ、悟空……」
「うん?なんだ?名前」
「私ね、今、すごく幸せ」
「……それは、オラもだ」

 悟空の真剣な表情に、頬がカッと熱くなった。欲を出せば、恋人同士らしくお出かけだってしたいけれど。私は悟空に我儘を言いたくなくて、そっと目を伏せた。隠し事をしているつもりはないのだけれど、胸の内を何でもかんでも話すものでもないと思っていた。まだどこか遠慮しているのだ。そんな細かい事など悟空は気づいてくれない。それでも、私は悟空のことが大好きで。想いを込めて手をぎゅっと握ると、悟空は無邪気に笑って、優しく肩を抱いてくれる。歯の浮くような台詞や愛の言葉を囁き合わなくたって、悟空と私は強く繋がっている。恐らくそれは「絆」と言うのだろう。そう考え事をしていたら、いきなり頬にキスされた。

「わ……!びっくりしたぁ」
「へへっ!隙あり」
「……悟空ってば」

 愛情表現もストレートで、しっかりと私だけを見てくれる悟空。私とキスをしているうちにどんどん目付きが鋭くなって、すごく男っぽいことに本人は気づいていないのだろう。普段のあどけなさの残る悟空とは雰囲気がガラリと変わってしまうから、こちらはドキドキして仕方がないのだ。この日もだんだんとキスが情熱的になっていって、私は内心、慌ててしまったくらいだ。

「ん……、悟空、待って……」
「……待てねぇ」

 腕力では悟空に敵うはずもなく、私はあっという間にソファーに押し倒されてしまった。私を見下ろす真剣な眼差しが、胸に突き刺さる。どこまでも真っ直ぐな愛に、熱いキスに、思わず、目眩がした。その痺れる様な感覚は、キミに一目惚れをしたあの夜に、よく似ていた。キミに溺れて、窒息死。



―Fin.―
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