はるをうたう 1
「ちおりん、雛祭りをするわよ!」
「ああ、うん」
土曜日の朝っぱらから人ん家に押しかけてきたルカによって放たれた脈絡のない宣言。もはや慣れたので適当に相槌を打つと、それが不服だったのかルカは眉をしかめた。
「ちおりん最近雑じゃない!? あたしの扱い雑じゃない!? やだ倦怠期……!? 年季の入った夫婦みたいねそうなのね!?」
「うるせえ――――!!」
アッパー入ってくねくね動く幼馴染を振り払う。だがここは玄関先だ。逃げ場がない。
「待ちなさいよちおりん! 今日雛祭りだから夜はちらし寿司なのよねん。食べに来なさい」
「なんであんたはそう一方的なの……」
「受験も終わってどうせ暇なの知ってんのよ? 両親も千織に会いたがってるし、それにどうせ雛人形も出さないまま今年を終えるつもりだったんでしょ?」
「うわー大きなお世話」
「ふふふ、口ではそう言ってもどうせ来るだろうことはわかってんのよ!? お見通しよ!!」
不敵に笑うこの幼馴染に、結局勝てたことはないのだった。
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