1日目の夜
「おーい、消灯時間だぞお前らー。ん、ちゃんと寝てるようだな。関心関心」
「……」
「……行ったか?」
「……みたいだな」
「よし! じゃあ早速枕投げ大会やろうぜ!!」
「ば、馬鹿! んなことしたらすぐ先生来るって!!」
「じゃあ好きな娘言い合いっこしようぜ!!」
「修学旅行かよ!?」
「間違ってないぞ」
「つか、言い出しっぺの手前から言えよ」
「俺は、櫻井由弥那ちゃん!!」
「……人の妹をそういう目で見るとは、いい度胸ですね……?」
「痛でで!? ちょ、やめっ、蹴るなよヤマト!!」
「おーおー、ヤマトは相変わらずシスコンだなぁ」
「ちょ、タンマタンマ!! そりゃ、ユミナちゃんは確かにレベル高いけど、ヤマトと同じ顔だからなんか恋愛対象にし辛いっていうか……。ヤマトもそういう目で見ちゃいそうで……」
「……えっ!? それ……ど、どういう意味、ですか……?」
「そこ! 妙な空気を作るな!」
「お前は不意に告白された女子か!!」
「早速部屋を代えたくなってきた!!」
「おいおい修学旅行の夜はまだまだこれからだぜ!?」
「うるせえよ体力馬鹿!!」
「こっちは一日中はしゃいで疲れてんだよ!!」
「男子中学生の体力舐めんな!! まだイケるって!!」
「無茶振りっ!?」
「もう。みんな明日起きれなくなっても僕は知らないよ」
「って一人だけ寝る体勢に入ってるんじゃねーよ舞鶴」
「そういえば、舞鶴君には好きな人はいるんですか?」
「……ぐーぐー」
「狸寝入りだ!! コイツ狸寝入りしやがった!!」
「なんてふてぇ野郎だ!!」
「布団ひっぺがしちまえ!!」
「うわっ!? ちょっと、やめてよみんな!」
「げへへへへ。やめて欲しけりゃ惚れた女の名を吐きな」
「何その理屈!? だ、第一、僕には好きな娘なんて……」
「いやおめぇ、よく高槻や水無瀬を眺めてるよな」
「史平ぁぁぁぁ!! なんっでそーゆーこと言うの!? 発言まで爆弾発言なの!?」
「へっ、照れるぜ」
「一ミリたりとも褒めてないからね!?」
「いーから吐け吐けー」
「カツ丼食うか?」
「故郷のオフクロさんが泣いてますよ」
「なんでみんなして刑事ドラマのノリ!? 僕が高槻さんや水無瀬さんを見てるのは、ただ単に目立ってるからだよ!! 自然と目で追っちゃうだけだからね!!」
「あー。確かに目立つよな」
「水無瀬はそーでもねーけど、高槻はうるせーもんなぁ」
「ほ、ほら、でしょ?」
「でもさぁ、ハタから見てりゃ二人とも結構レベル高くね?」
「言われてみればそんな気もするな」
「そうだなぁ。高槻は溌剌とした表情とか、健康少女って感じ? 水無瀬さんは、一見するとおとなしそうな文学少女って感じ? そんな二人がセットになってりゃ目を惹くよなぁ」
「まぁ、実際口を開けば高槻は超テンションたっけぇから疲れるし、水無瀬は超口悪いっつうかまんま男みてえなしゃべり方だけどな」
「それは言うなよ!」
「テンション下がるだろ!」
「俺はそんなんよか断然おしとやかな娘が好みだ!! ユミナちゃんみたいな大和撫子っ……あだただだ、ちょ、ヤマト、絞まってる絞まってる!!」
「全く懲りない奴ですね」
「……人間の腕ってあんな方向に曲がるんだね」
「新発見だな!!」
「助けろよ!!」
「そこは発想を転換させて、櫻井妹に関節をキめられてると思うところだろ!?」
「その手があった――!?」
「宇治川……お前は天才か!?」
「神!? 神光臨!?」
「Yes , I am !!」
「皆、気持ち悪いこと言わないで下さい!!」
「やっべヤマトがキレた!!」
「逃げろー!!」
「ってこっち来んなよ手前らぁぁ!!」
「おいお前ら、うるさいぞ!! 一体何を……」
「…………」
「……あっ」
「先生、ばんわー」
「ばんわー……ってちげえぇ!! 何時だと思ってるんだ!!」
「いや、先生、これには深い事情が!!」
「そ、そうですそうです! 田舎のばーちゃんが危篤で!!」
「死んだじーちゃんが枕元に!!」
「ほほぉう。ならその辺の事情とやらを聴かせて貰おうか。じっくりとな」
「いやあ先生、僕たちそろそろ寝ないとー……」
「今更何をほざいてやがる!! 全員ロビーで正座ッ――!!!」
「うへぇぇぇぇ!!?」
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