小説 | ナノ

朝_3 


 ここに来た日、はじめて食卓を囲んだ時のこと。

「…あたしたちがみなさんといっしょにごはん食べてもいいんですか?」

 フランはおずおずと口を開きました。
 前のお屋敷では、主人と使用人たちの食事の場所と時間は別で、一緒に食べるなんて考えられないことだったのです。
 しかし、ヘリオスはさして気にした風もなく答えました。

「無論。お前もラザも単なる使用人ではなく、俺達の家族も同然なのだから」

 フランはぽかんと口を開けました。

「かぞく…」

 それは彼女にとって耳慣れない言葉だったからです。

「そう、家族。『食事は家族全員が揃ってから』。それがこの家の決まり事だ」

 そこまで言ってから、ヘリオスは照れを隠すように咳払いをひとつ。

「…それにな、食事は大人数の方でする方が美味いぞ」


 その時のヘリオスの顔を思い出し、フランはくつくつと笑いました。
 ヘリオスは思わず半眼になり、サラダをひたすらトーストに挟む作業を止め、憮然と一言。

「…何だお前。人を見上げて失礼な」

「あ、いえ別に!」

 フランはぶんばぶんばと首を振りますが、いまいち怪しさは誤魔化しきれていませんでした。

「うふふ。何だか二人ともすっかり仲良しさんですわね」

「(…まったくだ)」

 笑みを含んだエオスの言葉に、ラザはしっぽを振って頷いたのでした。


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