小説 | ナノ

朝_1 


 ニワトリの鳴き声が、いつもと同じように一日の始まりを知らせます。
 小さな窓から伸びた薄い陽光が、ベッドで眠っているフランの頭を優しく撫でました。

「むにゃ…」

 フランはもぞもぞと身じろぎをした後、ゆっくりと目を開けました。

「おはようわん太ー」

 ぺしぺし。
 隣で寝ているわん太を起こします。
 わん太というのは白くて大きな犬で、フランの大切なお友達です。
 寝る時も同じベッドです。なぜならば、まだ六歳のフランはベッドが大きすぎるし、一緒に寝た方がお互いに落ち着けるからです。
 ところでこのわん太さん、本当はれっきとした「ラザフォード」という名前があるのです。周りの人は、基本的には愛称形の「ラザ」という呼び方をします。でも、フランは彼のことを自分がつけたあだ名でしか呼びません。
 そんなわん太ことラザがうつらうつらしているうちに、フランはすっかり身仕度を整え終えました。
 そして洗面所から帰って来ると、

「今日もいいお天気だね!」

 ラザに笑いかけました。


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