告白は私からだった。
好き、という独り言みたいな小さな呟きに、返事が返ってきた。
「俺も」
びっくりして、そちらを見ると、いつもと変わらないにこにこ顔。
そこから成り行きで、毎日一緒に帰ったり、頻繁にメールをしたり、電話をしたりした。
毎日が凄く楽しくて、充実していた。私は。
彼が果たして楽しいのか、それは私には分からないことだった。
彼は私に想いを告げない。
そもそも、私たちは所謂恋仲なのだろうか。
彼の発した「俺も」は、告白に対する返事だったのだろうか。
一度抱えた不安はなかなか消えないもので、楽しさは半減した。
けれど、そこで黙りっぱなしの私でもない。
ある日の帰り道、私は彼に問いかけた。
「私のこと、好きなの?」
彼は足を止めて、きょとんと私を見た。
それから困ったような顔をして、頬を掻いた。
「ごめん、伝わってなかった?」
正直に、頷いた。
すると彼は、一層眉尻を下げる。
「うーん……」
唸ったあと、彼はかすかに頬を染めた。困った表情は変えないまま。
「俺さ、付き合うって初めてだから、どうすればいいか分からなくて」
今度は、私がきょとんとする番だった。
「リコが不安な気持ちになってたなら、謝るよ」
と、頭を下げる。
「い、いいのよ!大丈夫だから、顔上げて」
仕方がないことだろう。
「私だって、付き合うのは鉄平が初めてだから」
彼が、ぱっと顔を上げる。
「少しずつ、前に進んで行けばいいんじゃない?」
「……うん、そうだな」
「そうね、まずは……」
手を繋ぐところから、始めようか。
きょうからまた、
(ゆっくりゆっくり)
(あるいていこう)