いつも通りの帰り道。
眩しいオレンジの夕陽に照らされながら、大股で歩く幼なじみに置いていかれないように、足を速める、いつも通りの帰り道。
「あ」
いつもより早い曲がり角で青峰君が立ち止まった。
「悪い、本屋寄るわ」
「え?青峰君が読書?」
「勘違いすんなよ。漫画だよ、マイちゃんのグラビアが載ってんだ」
そんなことだろうと思ったよ、と溜め息混じりに言えば、うるせえ、と吐き捨てられる。いつも通りのやりとり。
「じゃあな」
「うん、また明日」
いつもと違う曲がり角に歩きだした幼なじみの大きな背中が、少しずつ離れていくのを、いつものようになんとなく見つめる。
「あ」
「今度は何?」
先ほどと同じように、青峰君は歩みを止めた。
「俺お前のこと好きみてえだ」
そうして、一瞥もくれずにそんなことを言った。
意味を飲み込むのに時間がかかって、声も出せずに、動けずにいる私を残して、青峰君はスタスタと歩いて行ってしまう。
沈みかけたオレンジに照らされて、独り佇む、いつもと違う帰り道。
日常のおわり
(どんな顔して会えばいい)