ミロ大捕物帖


時は遡って、サガとカミュの姉のキスを見た後、衝撃的な姉弟のディープなキスを見てしまって、慌てふためいたミロが双児宮を飛び出して行った頃。

ミロはサガの怒号を聞きながら、一路双魚宮を目指していた。
こんな事、アフロディーテくらいしか相談出来ない。
いや、もちろんデスマスクでも良いのだが、ただの笑い者にされる気がして、やはり頼れるのはアフロディーテだ。

サガの小宇宙と共に、カノンの小宇宙が遅れてやって来て、ミロは光速の勢いで巨蟹宮への階段を登っていた。
間もなく巨蟹宮が見えて中に入ると、珍しくデスマスクが聖衣を纏って立ちはだかっていた。

「やっぱりミロか。慌てた小宇宙が近付いて来たから、俺様直々に出向いたんだが、お前、顔真っ赤にしてどうした?」

その声を聞いて、巨蟹宮の部屋からアフロディーテが出て来た。

「ああ、ミロか。ん?相談事なら私達が聞くが?」
「アフロディーテ!お前に相談したい事があって…」
「ミロっ!!待てっ!!」

サガの怒号が遠くから聞こえて来て、ミロは慌てた。

何で俺はこんなにサガとカノンに追いかけられなきゃいけないんだ!!
ただ、アフロディーテに相談したいだけじゃないか!!

「手短に話す。すげぇショックな出来事があった!双児宮に超美人なカミュの姉がいる。そこで、あのサガとカミュの姉のキスを見た後、カミュとその姉が…」

そこまで話した時には、既に追っ手が迫っていた。

「やべぇっ!!続きは双魚宮で!!待ってるからなっ!!」

ミロは後ろを振り返り、また次の獅子宮へとダッシュした。

サガとカノンは巨蟹宮にデスマスクとアフロディーテが立っているのを見て厳しい表情になった。

「ミロは何か口走っていなかったか?」

サガが有無を言わせぬ口調で問い詰めると、デスマスクがニヤリと笑った。

「カミュに美人のお姉さんがいるなんて知らなかったぜ。何やらサガ、お前とキスをしていたとか言ってたな」
「それは誤解だっ!!」

サガはほんのりと頬を染めて、すぐに抗議した。

「サガ、今はそんな場合じゃないだろう。俺は獅子宮へ伝令を飛ばす。流石にアイオリアとアイオロス相手じゃミロも逃げられまい」
「あ、ああ、そうだな」

カノンは小宇宙でアイオリアとアイオロスにミロを阻止するように伝令を飛ばした。
すぐに了解したという返事が返って来た。

「ここはデスマスクの誤解を解くのが先だ」

カノンの言葉に、サガは頬を染めたまま答えた。

「そんな事、分かってる!デスマスク、キスは誤解だ。私達がカミュの姉に酒を飲ませ過ぎた。意識がなかったから、口移しで水を飲ませた。ただそれだけの事だっ!」
「口移しねぇ…。それならば仕方ないではないか、デスマスク」
「まぁ、そうだけどよ」
「それにしても、それだけでミロがあんなに取り乱すとは思えない。何か他の事があったんじゃないのか?」

アフロディーテに突っ込まれて、サガはまたキスシーンを思い出して顔色を変えた。
カノンはサガの前に立ちはだかり、代わりに答えた。

「ミロは、まともなキスは未経験らしい。それで慌ててたんだろ。何せサガの口移しは、随分と情熱的だったからな」
「カノンっ!!」

今度こそサガは耳まで赤くしてカノンを咎めた。

あれはノーカウントのはずだっ!!
じょ、情熱的、だと!?
私はただ、普通に焦っていただけだっ!!

デスマスクは口笛を吹いて、サガを揶揄するように笑った。
アフロディーテは微笑み、サガの肩に手を置いた。

「ならば納得がいくな。君ほどの堅物がそんな事をしているのを目撃したら、ミロも慌てるだろう。その事の口止めに追いかけていた訳だ。デスマスク、通してやったらどうだ?」
「サガのキスか。そいつは面白れぇな。いいぜ、通してやる」
「分かった。私の口移しも口外無用だ。分かっているな?」

サガがギャラクシアンエクスプロージョンの構えを取ると、デスマスクは慌てふためいた。

「サガのギャラクシアンエクスプロージョンは御免だぜ。黙っていてやるから、それだけは止めてくれ」
「ならば、今はお前を倒すまい。カノン、行くぞ」
「サガ、遅いぞ。獅子宮にミロの小宇宙が到着した」
「分かっている。行くぞっ!!」

光の速さで走り出したサガとカノンの後ろ姿を見ながら、アフロディーテは内心ほくそ笑んでいた。

キスは漏らさなくても、カミュの姉の存在は隠さなくてもいいだろう?
それに、ミロが取り乱していた理由は他にもあるに違いない。
カミュとその姉が、とも言ってたしな。
これは面白くなりそうだ…。

アフロディーテはニヤリと笑って、巨蟹宮の部屋へと戻って行った。

その頃、獅子宮では、アイオリアとアイオロスが聖衣を纏い、ミロと対峙していた。
私服のミロには手が余る。
このまま、巨蟹宮に戻ってアフロディーテに相談するか、いや、後ろからはサガとカノンが迫っている。
アイオリアは別として、年上のアイオロスなら話を聞いてくれるかも知れない。
…経験豊富とは全然思えないが。

何だってまた、アフロディーテが巨蟹宮なんかにいるんだ!?
相談出来る相手なんてこの先いないじゃないか!!
唯一、相談出来るとすれば、斜め上とはいえ、シャカだけだっ!
教皇の間まで突破するしかないっ!!

「アイオリア、そこを通してくれ」
「それは出来ない相談だな。お前がサガとカミュにとって、屈辱的な事を言いふらそうとしているとの伝令がカノンから届いた。聖域中に知れ渡ったら、黄金聖闘士の恥。ミロ、お前をここで根性を叩き直す!!」

アイオリアがライトニングプラズマの構えを取るとミロは慌てて間合いを取った。

「アイオリア、そこまでして止めなくてもいいんじゃないか?ミロの話も多少は聞いてやろう」
「しかしっ!教皇であるサガの不名誉となれば、聖域の沽券に関わるっ!!」
「確かにな。しかし、俺もお前も口が固い。多少なら聞いてやっても…」
「流石、アイオロス!聞いてくれ!!カミュには超綺麗なお姉さんがいて、今、双児宮にいる。泥酔していたお姉さんに…」
「そこまでだっ、ミロ!!」

サガが叫ぶと、ミロはビクッとなって後ろを振り返った。
カノンも厳しい顔をしてミロを睨み付けている。

「カミュとの約束だ。双児宮での出来事は、誰にも知られたくないとの事だ。これ以上話すのであれば、容赦はしない」

それを聞いたミロは青ざめた。

いいじゃないかっ!!
キスの事くらい。
問題は、禁断の姉弟愛の事だっ!!

「くっ…ならば、カミュの姉の事は黙っていてやろう。その代わり、兄弟の事ならいいだろっ!!アイオリアとアイオロスに聞きたい事があるからな」
「アイオリアとアイオロス?何を聞きたい」

カノンは嫌な予感がしていた。
自分達にキスした事があるか聞いたミロの事だ。
何を言い出すか分からない。

アイオリアとアイオロスは怪訝そうに構えを解いた。

「何だ、ミロ。聞きたい事って何だ?」

ミロはそこでほんのりと頬を染めた。

「お前達、抱き合った事はあるか?」

サガは、今度は蒼ざめた。
カノンとキスをした事があるかと、気色悪い事を尋ねられたのを思い出して。
アイオリアとアイオロスは顔を見合わせて、不思議そうに応えた。

「兄と挨拶で抱き合うのは普通の事だが?」
「な、何!?」

ミロの脳内では、サヤとカミュが抱き合って見つめ合う光景が浮かんでいた。
それこそ恋人同士のように。

これが世間一般の姉弟なのかっ!?
恋人同士のように抱き合って、そのままキスをするのが、世間一般だとっ!?

ミロは完全に誤解して、うろたえた。
その後ろでは、ミロが変な動きを見せないか、サガとカノンがギャラクシアンエクスプロージョンの構えを取っていた。

「ミロは一人っ子だから分からんかも知れんが、普通の事だぞ。風呂も一緒に入る事もあるしな」
「風呂までっ!?」

アイオロスがそう言うと、ミロは更に顔を赤くした。
ちらりとしか見てないけれど、あのナイスバディなお姉さんとカミュが絡み合うようにして、風呂に入っているなんてっ!!
そのまま、その…キ、キスをした流れで、夜の営みまで…!?
カミュ、ファーストキスだけじゃなくて、もっと先まで行ってたのか!?
俺を差し置いて!!
クールを装ってるくせに、何て大胆な奴!!
聖域を抜け出してたのはそのせいか!!
羨ましいじゃないかっ!!
やっぱり禁断の姉弟愛だっ!!

ミロはまた完全に誤解して、それも明後日の方向に妄想が膨らんで行った。

いいなぁ。
俺もあんな綺麗なお姉さんがいたら、一緒に風呂に入って、抱き合えるのかぁ…。
出来ればサヤがいいけどなっ!!

「じゃあ、お前達はキスをした事があるのか?」

アイオロスは首を傾げた。

「何だ、そんな事か。頬にキスくらい挨拶では当然だろ?」
「そうだな。それくらいは当然だな」
「いや、俺が言いたいのは…」
「そこまでだ、ミロっ!!」

サガが、鋭くミロを遮った。
カノンは、アイオロスとのやり取りとミロの百面相を見て呆れていた。
ミロが完全に誤解しているのは一目瞭然だ。

「アイオリア、アイオロス、ここで話した事も口外無用だ。カミュの名誉に関わる。ミロは、カミュとその姉がお前達と同じ事をしていると完全に勘違いしている」

カノンがそう言うと、アイオロスとアイオリアは目を見開き同時に叫んだ。

「「男女でそんな事する訳ないだろうがっ!!」」

サガは厳しい顔付きで、アイオリアとアイオロスに告げた。

「ミロはカミュは姉とそんな事をしていると聖域中に噂を流すだろう。ミロをこれから阻止する。カミュのためだ。協力してくれるな?」
「ああ、もちろんだ」

アイオリアもアイオロスも厳しい顔付きになってミロを睨み付けた。
アイオリアはマントをばさっと脱ぎ捨ててライトニングプラズマの構えを取った。
ミロは光速拳さえ逃げ切れば何とかなると思い、ミロも逃げ道を探すように、ジリジリと前へ進んだ。
アイオロスはミロの動きに合わせて間合いを取っている。

「ライトニングプラズマっ!!」

無数に繰り出される拳をミロは何とか切り抜けた。

「おのれ、ちょこまかとっ!!」

立て続けにアイオロスが叫んだ。

「アトミックサンダーボルトっ!!」

流石にそれは避けられずに、ミロは真っ正面から、それを受けて吹き飛ばされたが、直ぐに体勢を整えた。
伊達に黄金聖闘士ではない。
しかし、着地した瞬間に、サガとカノンが同時に叫んだ。

「「ギャラクシアンエクスプロージョン!!」」

今度こそミロは後ろからまともに食らって、アイオロスに抱き留められ、羽交い締めにされた。

「聖域の風紀を乱すような発言は、このアイオロスが許さん」
「俺もだ、ミロ」
「ミロ、もう一度ギャラクシアンエクスプロージョンを食らいたいか?お前が音を上げるまで、私達は攻撃を続けるが?」
「それだけは嫌だっ!!カミュの事は絶対に秘密にするから、これ以上は勘弁してくれっ!!」
「ミロ、このカノンも許さんからな」
「分かった!!分かったから離してくれっ!」

ミロが慌てて懇願すると、ようやくアイオロスはミロを解放した。

「サガ、ミロは今日は獅子宮にとどめおく。変な気を起こさないようにな」
「ああ、アイオロス、頼んだ」

ボロボロになったミロは、性懲りもなく、禁断の姉弟愛で頭がいっぱいで、兄弟愛についてアイオリアとアイオロスに尋ねようと思っているのだった…。


Fin…

2014.8.6 haruka



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