「アールートー…」
間延びした力のない声が後方から俺を呼ぶ。特に振り向くこともしないで「なんだ」と返事をすると、返ってきたのは短い「あつい」という一言。
「あついのよアンタの家…よく冷房もないこんな家で涼しい顔してられるわね、アンタ…」
「冷房ならあるだろ」
「こいつは冷房なんて言わないわ、よッ!」
ガツン、と音がした。
思わず振り向くと、ソファに寝転んだシェリルがこの部屋に涼しいやすらぎの風を送り続けていた功労者の扇風機を足蹴にした音らしかった。
「おまっ…!壊れたらどうすんだ!」
「そしたらクーラー買えばいいじゃない」
「そういう問題じゃねぇ!」
「ハイハイ分かりました、節約型のアルトさん」
そう言って不機嫌にむうっとするシェリルは再びソファに寝転ぶ。トップアイドルが夏の暑さに耐えられずウダウダするこの姿、銀河中のファンにも見せてやりたいぜ…と大きな溜息をつく。
「本当はおニューの水着で海に行く予定だったのに…なによ」
今日は生憎の大雨で、そのせいもあって余計に蒸し暑いのだ。風邪引きたいのかお前は、と言いながらご機嫌ナナメなシェリルの前に出来上がったものを差し出す。
「…なに?」「パフェ」「見たら分かるわよ」「じゃあアルト様特製パフェ、シェリル用」
そこまで言うとシェリルはやっと起き上がり、特製パフェを受け取る。先程までとは打って変わり、にっこり笑顔を浮かべて食べはじめた。
「これで許してあげるわ」なんて呟きながら食べるシェリル。そうして辿り着いた、最後の一口。シェリルが苦い顔をして口の中の何かを取り出す。対して俺は涼しい顔でアイスコーヒーを飲みながら横目でその様子を見ていた。
「……指輪…?」「見たら分かるだろ」「アンタ、まさか」「俺は節約型なんだよ、色々とな」
つうかそれ買うために節約型になったんだよアホ、そう言ってアイス付きの指輪をシェリルにはめ、何も言えない用に口を塞いだ。返事なんて、言わなくても分かるからいらない。
「今日雨なんだけど?」
「結婚式は晴れにやるから大丈夫だ」
「もっとムードとか気にしなさいよバカアルト!」
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