※捏造

ずっと、幼馴染みという関係に依存していた。幼馴染みのスザクとしてなら、幼馴染みのルルーシュに触れることを拒否されることはない。しかしいつからかルルーシュへ触れる度にスザクの心臓が弾けるように騒ぎだし、触れた箇所は熱を帯びてじりじりと甘い余韻を残すーーそれが何モノであるかに気が付かないほどスザクは鈍感な質では無い。奥で静かに揺らめいている小さな炎の正体は、まさしく恋心のそれだった。

スザクもルルーシュもまだ小さな頃だった。ルルーシュの妹であるナナリーも一緒だった。神社の境内で無邪気に遊んでいた三人の間を、突然強い風が吹き抜けた。「あっ」ナナリーの声だった。小さなその声にすぐさま反応したルルーシュは慌ててナナリーに近寄り「どうしたんだいナナリー」「髪紐が…」二つ縛りをしていた片方の房は髪紐が取れてばらばらになっていた。どうやら先の突風で千切れてしまったらしく、ナナリーは不安そうに解けてしまった髪を掴んでいる。
緊急事態な為、それまで行っていた鬼事を中断し、スザクとルルーシュはナナリーの髪紐を捜索することにした。するとルルーシュが石段の近くであったと声をあげたので、スザクは安堵の笑みを浮かべながら彼に駆け寄った。
その時、ルルーシュの身体が斜めに傾くのを捉えた。バランスを崩したようだ。あのままでは、石段の上から転げ落ちてしまうー最悪の展開が頭をよぎり、スザクは全速力でルルーシュに駆け寄ってその細腕を引っつかんだ。
二人で後ろの土の上に倒れ込んでしまい、ルルーシュを受け止める。心臓がやけに早い。掴んでいるルルーシュの腕は白く、細い。丁度、スザクの目線に彼のきめ細かいうなじがあった。なぜなのかはわからない。だが、見てはいけない背徳感を覚える。
「おふたりとも、だいじょうぶですか?」
ナナリーの声が随分遠くに聞こえる。固まってしまったスザクを不思議に思ったルルーシュが、心配そうに見上げてきた。
「スザク? 怪我でもあるのか?」
「…………だいじょうぶだ」
咄嗟の言葉だったが、上手く騙せたようだった。この日から、ルルーシュを見るたびにあの細腕の感触や、なまじ美しかった、あのうなじを思い出してしまう。

あれから、何年も経った。
いつの間にか義務教育を終えて高校生になっていた。愛と表現するにはまだ幼い恋心は、何年という想いを吸い上げて膨らんでいる。いつ破裂してしまうのだろう。スザクにはその瞬間がとても恐ろしいものに思えて仕方がなかった。
幼馴染みという枠組みを超えてしまったら、幼馴染みでないスザクはルルーシュに拒絶されてしまうかもしれない。スザクにはそれがこの上なく、怖い。
ナナリーに付き添うルルーシュの、全てを自分が知りたい。スザクは切望していた。枯渇している。彼の全てを手に入れることが出来たなら、どんなに幸せかーーしかし、それはきっと叶わない。スザクがルルーシュの全てを手に入れようとすれば、今まで積み上げてきた全てが崩れてしまうのだから。
満たされることはない恋心。
「ルルーシュ」「ん、なんだスザク?」
「きみは、どこにも行かないでくれ」
だからこそ、
「…なんだ、どうしたんだ突然」
「僕の側にいて欲しいんだ」
自己満足心を満たすのだ。
ルルーシュの目が揺れた。困惑の色を見せる固い表情のまま、ルルーシュは少しの間を置いて畏怖したような声色で言う。
「お前…なんか、変わったな」
知らない人みたいだ、と、ルルーシュが戸惑う姿が可愛くて、スザクは無意識に笑みを漏らしていた。
(もっと知らない君を見せて)


130317

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