その日の夜に、私は早速昼間に説き伏せた友人であるスザクの話を奥さんに持ちかけました。奥さんは神妙な面持ちで私の話を聞いていました。しかし段々と表情が思わしくなくなっていくのを感じた私は、単刀直入にスザクをこの家に住まわせてやって欲しいと頭を下げました。
「お願いします。あいつには、スザクには私以外に頼れる者がいないんです。食費なら私が今の倍額支払います。…お願いです。あいつを、一人にさせたくないんです」
硬く目を瞑ったその暗い瞼の裏側には、どこか重苦しく生きているスザクの姿が映り、じんわりと熱くなるのを感じました。
彼は、自分の道の為に自ら窮屈な境遇にいることを選んだと結論していました。ふつうの人から見れば、まるで酔興です。そのうえ窮屈な境遇にいる彼の意志は、ちっとも強くなっていないのです。彼はむしろ、神経衰弱にかかっているくらいなのです。しかしそんな彼は、私のことを友人だと認めてくれているのです。だからこそ、私も彼とともに向上の道を進むと発議したのです。それは、まんざら空虚な言葉ではありませんでした。孤独になろうとする彼を支えてやりたいと思ったのです。
「顔をおあげなさい」
奥さんの凛とした声に従い、私はゆっくりと頭を上げました。もしかしたら断られるかもしれないと、私は恐怖していました。しかし、奥さんは私の想像の裏側をいくような優しい声色を発しました。
「…あなたがそこまで言うのなら、仕方ありませんね。少し生活は厳しくなりますよ、いいですね?」
「有難うございます! ありがとうございます…奥さん」
私は奥さんの手を握りしめ、大いに喜びました。歓喜と安堵で、ほんの少し涙を滲ませる私を見て、奥さんは微笑んでいました。



「奥さん、紹介します」
翌日、私は早速スザクを連れて来ました。奥さんの許可を頂いたぞ、と言うとスザクは心底驚いた様子を見せました。あんなスザクを垣間見るのはとても久しぶりでした。
玄関を開けると、そこには奥さんとルルーシュが私たちを待っていましたので、すぐにスザクを紹介することにしました。
「彼が私の友人の、スザクです」
スザクは唇を固く結んだまま二人に一礼するだけでした。
「この方たちが、私がいつもお世話になっている奥さんと、一人息子のルルーシュだよ。ルルーシュは私たちと同い年だから君も仲良く出来るとおもう」
「これから宜しくお願いしますね、スザクさん」
「…宜しくな」
二人はそう言って微笑むのですが、スザクがなにか言葉を発することはありませんでした。私は相変わらずの無愛想な対応に呆れ、少し重い空気をなんとかせねばと早速部屋に案内することに決めました。


130213





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