翼をもいで叩き付けたい





!角飛前提


















白い肌に、薄く赤みがさす。
それにすら興奮して、こく、と呼吸を引き攣らせた。
飛段の喉を唇でゆっくりなぞると、桜色とも思える吐息をそっと洩らした。
なぜ飛段は、了承したのだろうか。
消えゆく理性の中でぼうっと、思いめぐらせる。
普段ながめている横顔に伺える温度の低い陰りが薄まって、かすかに蒸気した頬と潤んだ目がこちらを向く。
もう自分のものなのではないかと、愚かな錯覚がした。
紛らわすために蒸気した頬と同じ色をした耳を食む。


「…ん、ん」
「、飛段…」


この興奮が飛段に見えないようになるべく自然なそぶりに思えるよう、
緩く、深く、何度か突くと、色付く息が乱れて、いっそうすべてを抱きたくなる。
ああなんて綺麗な姿なのだろう。
不健康なまでに青白い肌は、いつに増して綺麗だ。
ああ、この姿も、あいつには見せているのだろうか。
自分だけのものにしたいのに。
敵わない、叶わない、かなわない。


「あ、…あ、っ、はあ、」


生理的なのだろうが、その濡れる目許を指でなぜると、思わず唇を重ねていた。
はっと離すと飛段はただ単純に、不思議そうな表情で俺を見ていた。
飛段はなぜ、この行為を了承したのだろうか。
あの時、あの数十分前、なぜ俺に欲情の笑みを見せたのだろうか。
わからない。
わかりたくても、分かることなんてできなかった。
ああ、飛段。
…こんなにも近くて、こんなにも遠い。


「…いま、のは」
「、…」
「…………いや、いい」


なぜしたのか、と訊こうとしない飛段は、はやくつづけろ、と俺の肩に腕を絡めると身体を凭れた。
ああ、錯覚だ。
飛段が、こんなに温かいわけがない。
くっきりと見えていた飛段がぼやける。
わからない。わかれない。
ただ、乱れる姿はいやに綺麗だなと思った。
立ち姿も座る姿も歩く姿も、そしてこうやって乱れる姿さえ、儚いほど綺麗なのだ。


「あ、っ…あ…!」


ぼやけた意識。
そのなかで、輪郭のはっきりしなくなった飛段の、綺麗な銀の髪に触れるとすべてが、
すべてが透き通ってなにもかも零れてしまうのではないかと思う。
綺麗は、拒まない。
わからない。







ああ、手の届かない。








一層高く甘い声を上げて達した飛段はくたりと俺に凭れた。
首筋にかかった飛段の吐息に更に興奮が高まって、次いで達する。
二人して畳へ沈み込むと、飛段と目があった。
ああ、お前はあいつのもの。
赤紫の瞳が知らせる。
俺なんて、きっと見ていないのだ。
お前の瞳に映るあいつが憎く見える。



「すまない」
「…別に、アンタが謝る必要はねェだろ」


たまらなくなって飛段を抱き締めて、指を絡ませた。
それを敷かれた白の波に押し付けて、この男が俺のものになればいい、と小さく願った。

















翼をもいで、叩き付けたい










Fin.


そしてまた繰り返す












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