「なまえのことが好きだよ」


その唐突過ぎる言葉に、私は思わず飲んでいたお茶を盛大に噴き出してしまった。


「ちょっ…!!ど、どうしたのいきなり。てか、正気?」

「僕はいつでも正気です。それより、これ早く拭いてください。汚いから」

「あ、ごめん」


どうぞと渡されたハンカチを借りて、私の被害に遭った部分を拭いていく。

てか、このハンカチ絶対サイのだよね?大丈夫なの?普通に借りちゃったけども。


「で、何で突然そうなったわけ?」

「突然じゃないよ。前からそう思ってた…多分」

「何だその自信なさげな言い方は」

「いや、この気持ちを何ていうのかずっと知らなかったから…。つい最近本で読んだんだ」

「へぇ……」


私は一旦落ち着こうと自分の湯飲みに手を伸ばした。


「なまえは馬鹿でドジで間抜けで、おまけにブスで気が利かないし、」

「ちょいちょいちょいィィ!!酷すぎるよねそれ?!いくらサイが毒舌だって分かってても傷つくから!!」

「まぁ、話は最後まで聞いてよ」


思わず立ち上がった私を、サイがまた席に座らせる。

ちなみに、さっきから私達がいるここは茶屋。私が突然立ち上がったせいでお客さんが皆こっちに注目。

うう…視線が気になる…。


「そんなはずなのに、なまえが隣にいるだけで、胸が苦しくなるんだ」

「……」

「でも、また一緒に居たい、色んな事を喋りたい、もっと僕の知らないなまえを見てみたいって、そう思う」

「サイ…」


さっきまでの調子の良い毒舌とは正反対。

よくもまぁこんな恥ずかしいセリフをサラッと真顔で言いのけるな…。

聞いてるこっちが恥ずかしくなってきた…。


「これを‘好き’って言うんだよね?」

「…そう……だと思う…」


サイはニコッと笑ってやっぱりね、と続けた。


「で、なまえはどうなの?僕の事、好き?」

「えっ…!!そ、そんな突然…!!」

「いつも一緒に居てくれるって事は、嫌いではないんでしょう?」

「か、顔近いってば!!」


サイは私の方に顔をズズッっと近づけて言った。


好き…?私が、サイの事を…?

いやいや、今まで一度もそんな事思ったこと無いよ?無いけども、決して嫌いではない…。

嫌いじゃないって事は、好き?え、嘘だって。絶対嘘。


あー、段々分からなくなってきた。私は、サイの事を……


「まぁ、僕は待ってるよ」

「え?」

「いつかなまえが僕の事を好きって言ってくれるまで待ってる。だから、」

「うわっ…!!」



ギュッ…



気がついたら、私はサイの腕の中にいた。





「早く僕の事好きになってよ」




ポーコ・ア・ポーコ
(少しずつ縮まる距離)






―――――

こんにちはー!!
今回は久々のサイ夢に挑戦。
最近恒例(?)となってますが、これも思いつき話です。昨日の夜寝ながら考えました(爆)
途中、「あれ?サイってこんなキャラだっけ?」とか思いつつも、
楽しくなっちゃったのでそのまま強行突破\(^0^)/

ちなみに、タイトルのポーコ・ア・ポーコ(poco a poco)とは、音楽記号で「少しずつ」という意味です。
まさにそのまんま使いました(笑)


では、ここまで読んでくださりありがとうございました!!








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