01
建物から外に出ると、とりあえず私は走りはじめた。
今は何をしたら良いか分からない、でも、とにかくのろのろと歩いている時間は無いと思ったからだ。
地面を蹴り、シカマルの家に向かう。
「シカマル!」
「うおっ!琴音か…」
ある人物、もといシカマルは、自宅の縁側にゴロンと横になり、将棋か何かの本を開いたまま顔に被せて寝ていた。
睡眠時間を邪魔されて一瞬嫌そうな顔をしたが、それでも私がもう一回呼び掛けると体を起こしてくれる。
「何かあったのか?」
「あの、さ…」
私のいつもと違う様子を感じ取ったのか、シカマルは眠そうな顔から一転、いつもより固い表情でそう聞いてきた。
そして私は、つい先程の綱手様とのやり取りを全部シカマルに話した。
「任務復帰、か」
「…うん」
「お前、どーすんだ?」
「分からないけど…やるしかなさそうだね」
「はぁ…。だから俺は“五代目に言った方が良い”って言ったんだ」
「ごめん…」
シカマルは小さくため息をつくと、考え込むように腕を組んだ後黙り込んでしまった。
確かにシカマルの言う通りだ。私がこの世界に来た時すぐに伝えるべきだったと思う。でも、あの時はまさかこんな事態になるなんて予想していなかった。いや、出来なかった。
「まぁ、こうなったらしょうがねぇな」
「どうするの?」
少しの沈黙の後、シカマルはよっこらせと言いながらと立ち上がり、その場でググッと伸びをしながら欠伸した。
「俺が五代目になんとか話をしてくる」
「な、何て…?」
「お前が任務に行かなくてもいいようにだ」
「…でも、そんなこと出来る?」
「どうなるかは分かんねぇけど」
そう言って、シカマルは私の頭にポン、と手を置いた。まるで心配するなとでも言うように。
「琴音は家に戻ってろ。話が終わったらお前ん家行くから」
そして、そのままゆっくりと歩いて行った。その背中は、いつもよりも大きく見える気がした。
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