蝉のような恋をした。 | ナノ





上手く笑えただろうか、私は。


好きな人が居るんだと、照れくさそうに、けれど誇らしそうに話してくれた。
ずっと好きなのだと。どうしても諦めきれないのだと。

どうして、そんなに幸せそうなの。笑っているくせに、苦しそうなの。叶わないのだと、心で泣くの。

「ずうっと見ているのだけれど、全然気付いてくれないの」

嗚呼、相手は誰なのだろうか。こんなにも想われているのに、全く気付かない輩は、誰。
なんて羨ましい。
なんて、愚かしい。
どんなに願ったって、どんなにすがったって、その熱い視線を受けるのは私ではない。代わりにすらなれないのか。

鼻の奥がつんと痛む。滲む視界に気付き、慌ててぎゅっと目を瞑った。

私にしないか。
私を選んではくれないか。
私なら、そんな顔はさせまい。泣いているような、笑っているような、そんな顔にはさせまいに。



拙い恋だったのだ。
初めから終わっていた恋だった。
一時でもいい。熱い視線の先に立ちたかった。それだけでよかった。そんな恋だったのだ。

もう、足掻いたところでどうにもなるまい。
恋の相手を語る瞳を見て気付いてしまった。烏羽玉色の瞳の奥にちらりと見えた熱、あれはいつかの私と同じだ。諦めなければと言いつつも、どうしても捨てられない想いを抱えている、そんな瞳。

私は、諦めるよ。
瞳の奥の想いを見てしまえば、諦めるほかないだろう。

諦める。諦めるから、どうか、もう少しだけ見つめることを許してはくれまいか。
そうだな。
漆日。漆日間だけ、猶予が欲しい。
必ず、この燻る熱を捨てるから。

そうしたら、胸を貸りて、少しだけ泣いてもいいかい?それくらい、許してくれるかい?
だって、私の初恋だったのだもの。それを捨てるのだもの。少しだけ、我儘を言ったって許してくれ。


「どうすればいいのかな」


それを私に聞くのか。
ならば笑ってくれ。いつもの、あの笑顔が見たい。凡庸な例えだけれど、大輪の華が咲き誇ったような笑顔が、見たい。

諦めてはいけないよ。
諦めたら、許すものか。
だって私の初恋が土台なのだから。


「頑張るね!」


嗚呼、なんて残酷なのだろう。



蝉のような恋をした。











鉢→雷に見せかけた鉢→←雷、けど似非三郎すぎるwww
雷蔵も実は三郎が好きだけど、自分の想いで手一杯で気付かない三郎。
どうしてもハッピーエンドにしたいんです^p^




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