庭球夢 | ナノ

 ROBOT :3


「ミョウジさんっ!!」  バンッ

勢いよく扉が開かれ、彼が現れた。
「た、すけ...」
「落ち着いて!大丈夫。ゆっくり、ゆっくり深呼吸しよう」
「すう...はあっ はあっ」
「大丈夫...?」
「え、えぇ...大分楽になった。......それにしても、どうして」
鳳くんは若干目をそらしながら言った。
「あ、あの...ゴミ捨てしてるの見えて......。今日なんだか具合悪そうだったから」
「ついて来た」
「ハイ」
ついて来た、というとなんだかつけて来たみたいで聞こえが悪いけど、おかげで私は落ち着けたのだから感謝しなくちゃね。

アレ、でも何故...

「なんで私が具合悪そうって思ったの?」
「え?だって具合が悪そうだったら大体分かるでしょ?」
「でも、私はロボットとか言われるくらい顔に出ないのに...」
「出てるよ!」

急に大声を出すから驚いて、私は次の言葉が出なかった。

「あぁ...ゴメン。でも、あの、分かるよ。
君は覚えていないかもしれないけど、俺たち幼稚舎でも何回か同じクラスになったことがあって...
昔より表情に出なくなったけど、分かる。」
「.......!」
「え?!ミョウジさ...」



あわてふためく鳳くんよりも、自分自身のほうが驚いていた。
いつぶりだろう...こんなに涙が出るのは...
何年も泣いてなんていなかったから、止め方も分からなくて、上手く言葉も出なくて
とても困惑していると鳳くんがその大きな手で私の左手を握った。

「あの、なんでっ...分かっ...だって、わだし」
「ロボットなんかじゃないよ。...やっと泣いてくれた」
「へ...?」
「辛そうにしてたから。ずっと、泣きたかったのかなって」
「?」

泣きたかった...私が?辛そうに、してた...?
私の心の奥の奥。隠し切れない感情、鳳くんには見えていた。
私自身ですら気づけなかった気持ち、彼は気づいてくれていた。

「もしかして、気づいてなかったの?」
「...みたい...」
「もう...馬鹿...だなあッ......あははっ」
鳳くんはぎゅっと私の手を強く握りなおして、泣き笑いの顔になった。
大きいのに、本当に犬みたいだわ... なんであなたが泣くのよ...

「前に、英語で映画を見たでしょ?」
「...あぁ(鳳くんがすごく泣いていたときの)」
「その時、俺には君が涙をこらえている≠謔、に見えたよ。
掃除をさせられていた...ときも、嫌そうだった。
そういうの、ちゃんと分かるから。 誰に分からなくても、俺は」
「......」
「 ね 」

私はボロボロに泣いていた。
今まで出してこなかった全ての感情をさらけ出すように。

「笑って...」

すると鳳くんがなにかを呟いて、けれどそれを私は聞き取れなかったから聞き返した
「え?今なんて」
「わ、わらって、欲しいよ。」
顔を真っ赤にして、ぎこちなく彼は言った。
私に、笑って欲しいと......
で、でもっ そんな急にはっ!
「そ、そうだよね!急には無理だよね...!」
「えっ あ、うん...」

「じゃあ、あの............抱きしめても良いですか」
 え?!
答えるより先に、私は彼の腕に包まれた。

「あったかい...。うん、ちゃんと人間じゃないか。あの人達ヘンなこと言って...」
「......ふふっ」
なんだかどこまでも私のことを心配してくれる鳳くんを見ていたら、自然と顔が綻(ほころ)んだ。
「ミョウジさん!今、笑った!!」
鳳くんは私から体を離して、少年のように無邪気に目を輝かせた。
「あ、うん...そうかも...」
「あははっ!良かった、よかっ...たぁ...」
「鳳くん」
「ん?」
「ありがとう。」
「!」
(き、綺麗な、笑顔だ...っ!)




ROBOT
(どうかした?)
(ミョウジさん...うぅっ...!)
(え?!なに!?)




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完結です。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

ちなみに分かりにくいかもしれませんが、
最後の長太郎は、貴方があんまり綺麗な笑顔だったために号泣です。

南風



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