すくう



「無理・・・限界・・・。」

部屋の中には書類や資料、本の山、5日間徹夜しても終わらない仕事なんて初めてだった。
正確に言えば自分で終わりを見出せなくなっていた。
完璧主義の俺としてはあらゆる面から考察したくなる。
その結果がこれ。
だけどさすがにもう限界だ。
お風呂入りたいしご飯食べたいし睡眠もとりたい。
あとそれからこの部屋を片付けて、いやその前にこのデータを依頼主に渡さないといけない。

「お風呂入って・・・ちょっと寝てから、かな。」

ふらふらと寝室に行きバスタオルと着替えを持ってお風呂に入る。
ちゃんと湯船につかるとほっとしてしまい今までの疲れが一気にやってきた。
瞼が重たくて気を抜くとそのまま寝てしまいそうだった。







「臨也!」








はっと気がつくとなぜかシズちゃんがいた。
夢?なんだこの状況。
いまいち展開に着いていけずにいるとここがバスルームの脱衣所だと気づく。
あれ、俺たしか仕事に区切りをつけて、それでお風呂に入ってから仮眠してデータを渡しに行こうと思って・・・。

「俺、寝てた?」

指先とかふやけまくっているからきっとそうだ。
だけど何でシズちゃんがいるんだろう。
それより俺の家の扉は無事なんだろうか?

「ビビらせんじゃねぇよ・・・。」

「ごめん、てか何でいるわけ?」

うっかり素直に謝っちゃった。
どうやらシズちゃんはここに来る途中で波江さんに会ったらしい。
それで差し入れと鍵を預かってきちんと正しい形で俺の部屋に入ってきた。
けど仕事をする部屋にもリビングにも寝室にもいなくておかしいと思ったところで、
バスルームの明かりに気づいて入ってみるとぐっすり寝てる俺を見つけたようだ。
お風呂で寝るっていうか場合によってはそれが気絶だったりするから危ないと思ったんだろうね。
「仕事に懸命なのはどうでもいいが、手前の管理くらいちゃんとしろ。」

そりゃあ殺したい奴が浴槽で溺死?とか腹立たしいもんね。
俺ならそんなくだらないことで死んでんじゃねぇよって思っちゃう。
しかし、静雄クン。この状態とっても恥ずかしいよ、主に俺が。
だって俺1人全裸ですよ、シズちゃんは俺を抱き抱えたままで服濡れてるし。
せめてバスタオルで包んでもらいたかったなー。
とりあえず着替えを済ませてから、心配させてしまったお礼も兼ねてご飯を作りにかかる。
本当はデータを渡しに行きたかったけど、今日くらいはゆっくりしようと思った。