白いシーツの上にゴールドの細い手首を縫い付けた。今、こいつを見下ろす俺の目はどんな光を宿しているのだろう。容易に想像はできるものの、存外理性などというものは、顔も知らない母親の胎内に置いてきたようなのでこの衝動を抑える術を俺は知らない。

「何しやがる」
「理由はない」
「じゃあ退けよ」
「それは却下だ」
「くそめんどくせえ野郎だな、おめえはよ」
「自覚はしているさ」

簡単な受け応えだけして、尚も何か言いたげな薄い唇に噛み付いた。俺の歯が強く当たったみたいで、微かに血の味がする。唇が切れたのか、痛みに眉をひそめたゴールドの、しかし満更でもない恍惚とした表情は如何せん俺の情欲を煽るのだからどうしようもない。
唇を離して、やはり赤くなっている下唇を指先で撫でる。欝陶しそうにゴールドが身じろぐが、俺の手がそれを許さない。嗚呼、こんなにも近いのに、どうしてまだ満たされない。
金色の瞳に俺が映る。ゆらゆらと湿り気を帯びたその表面に映る俺は、なんとも情けない顔をしていた。

「なあ、ゴールド」
「んだよ。セックスはしねえぞ」
「そうじゃない」
「したくないわけ?」
「そういうわけでもないが」
「どっちだよ」
「話を聞け」

押さえ付けていたはずの腕はいつしか外れ、ゴールドは上体を起こしていた。するりと俺の下から抜け出して、ベッドの淵に腰掛ける。しかしその間、俺の手を離すことはなかった。
こんなにも貪欲に俺の欲しいものを与えてくれる、そんなこの男を俺はどれだけ愛せるだろう。

「教えてくれ」

あいつを束縛するような、重たすぎるこの気持ちが自分でも苦しくてたまらないんだ。
大切にしてやりたい。
全身全霊で愛し抜いてやりたい。
だけど、俺の全てを刻み付けてやりたい。
相反する感情のやり場を見つけるには、俺達は幼く無知だった。

「足りないんだ」

ただ、お前が。



∴矛盾に準ずる
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