空にちりばめられた星が綺麗だった。初夏特有のじめじめした風が、いつもより気持ち良く感じた。温めたばかりのレトルトのカレーが甘口だった。どっかの森から聞こえるホーホーの声がなんだか寂しかった。そんなときにふと会いたくなるような、さ。俺達の関係はそんなもんでよかった。それくらいが、ちょうどよかった。

「今日も来たのか」

シルバーは毎度おなじみの台詞を飽きずに問うけれど、きっとあいつ自身気付いていないんだろうな。いつか教えてやりたい。シルバーがいつもどんな顔して俺を迎え入れてくれるのかを。そしていつか教えてほしい。俺が会いに来た瞬間の、なんともいえない綻んだ口元のわけを。

「今日はよぉ」
「ああ」
「チンしたカレーが甘口だったんだ」
「ほう」
「だから、来た」
「そうか」

とどのつまり今日も。わかりにくい微笑を浮かべて俺の手を取るシルバーが、俺は変わらず大好きなだけだった。
夜は孤独を連想させる。俺には家族(ポケモン達も含めて)がたくさんいるから、あまり寂しいと意識することはない。でもこいつは違うだろうから。なんて優しい俺様、こんなに尽くしてやってるんだからそろそろ見返りを求めたっていいんじゃねえの。
一心不乱に愛するなんてできるほど俺は大人じゃねえし、んなことシルバーだって望んじゃいねえだろうさ。ただ、こうして、会うための理由を探してる俺は、俺たちはきっと。

「なあシルバー」
「なんだ」
「明日も雨ふらなけりゃいいな」
「降っても降らなくても同じだろうがな」

そうさ。ちゃんと俺のことわかってんじゃん。自分でわかるくらい綺麗な弧を描いた口元を見て、シルバーが「なんだその顔は。」ってキスをする。ああ甘いな。これだから恋愛はいけねえ。



∴偲ぶ夜
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