(情事後R15)

「なんか今日のお前、いつもより余裕なかったよな」

そんなに俺が足りなかったのかよ?と一糸纏わぬ姿でけらけらとゴールドが笑うものだから、俺はため息を一つ溢して「お前が言うな。」と控えめに返した。シーツに俯せに寝転んでいるゴールドの、薄く産毛の生えた日焼けの少ない白い肌をそっと指でなぞる。奴が未だに熱を持っているのか、それとも単に俺の指先が冷えきっているのか。どちらにせよゴールドには(決して厭らしくない意味での)刺激が強すぎたらしい。「うひゃあ!」と小さく悲鳴をあげて、それから自分の裏返ったその声に頬を赤く染めた。バカなやつだ。

「て…てめぇこの野郎っ!」
「お前が勝手に声を出したんだろうが」
「ちげえよ!この手は何だ!この手は!!」
「労っているだけだ」

そう言えば、ゴールドは言葉に詰まったのか押し黙る。労る、なんて。また俺らしくない台詞を吐いたものだ。自覚はあった。

「…シルバーちゃんさあ、」
「その呼び方はやめろ」
「やめねえ」
「どうしてもか?」
「そんなに嫌なら黙らせてくれてもいいんだぜ」
「絶倫」
「バーカ。キスしろっつってんだよ。ほら、早く」
「回りくどい」
「他に何て誘えば、お前は満足するわけ?」
「さあな」

にやり、と口の端を吊り上げたゴールドの体を仰向けに転がし、覆い被さるようにキスをした。何度目だろう。ああ、嫌になるほど、甘い。
永遠を信じないまま、息絶えたかった。永遠を信じて、朽ち果てたかった。相反する感情は俺の吐き出したこの吐息の中に、静かに溶けるだけなのかもしれない。昨日の夜は寂しいだけだった。影だけが俺に寄り添い、心を剥いでいく、感覚の訪れに恐怖する。今日は違う。俺の手先から伝わるこの男の温もりは、俺をきっと孤独にはしなかった。深海で囁く貝のような、それはまるで一抹の泡沫のような淡い恋心だったのかもしれない。雪解けと共に花開いては春を誘い連れる風、そうだ、そんなイメージだ。光が踊るように瞬いた世界でなら、俺も不確かな定義の中で永遠を見つけられる。

「ん、」
「、ゴールド」
「なに」
「俺は……」

俺はきっと、お前が思っている以上に、お前のことを好いている。
そう伝えたらゴールドはどんな反応を示すだろうか。「んなこと知ってらあ。」と鼻で笑うか、「はあ?気持ちわりいこと言ってんじゃねえぞ。」と一蹴されるか、それとも、

「なあ、シルバー。俺さ、やっぱお前のこと超好きだわ」

だからもっとお前も俺に惚れちまえ、と。そう笑うゴールドは確信犯だ。わかっている、そんなことは今さらだ。
覚悟しろ、そうこいつに告げた俺の声は震えてはいなかっただろうか。だがまあ、しかし、満足そうにゴールドが目を細めたから、今日はこれで良しとする。



∴聖母イヴは永久を唄う
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