(R18)

もう止められるものか。
互いの酸素を奪い合うような激しい口づけを交わし、早急にベッドに押し倒したゴールドの上着を手際よく脱がせる。その首筋に舌を這わせると、小さくゴールドが肩を震わせたのがわかった。痕をつけるという行為はどうやら奴にとって、気持ちいいというよりは擽ったい行為であるらしい。

「ふ、ははっ」
「何を笑っている」
「いや……お前の顔、」
「勿体振らずに言え」

鎖骨に口づけながらゴールドの顔をちらりと盗み見れば、それはもう情欲に溺れた妖艶な顔で、にやりと笑って見せたのだった。


「余裕無さすぎじゃね?」


その口を塞いで再び深くキスをする。当然だ、生憎最初から余裕なんてものは持ち合わせていないのだから。

「ん、ふっ」
「……、」

ねっとりと舌絡めて貪るようなくちづけはそのままに、ゴールドのズボンを下着ごと膝まで下ろす。本当は上もきっちり愛してやろうと思っていたのだが、何よりゴールド当人がそれを望んだのだ。ならば、お望み通り一秒でも早く事を済ませてやろう。
纏う衣服を失い外気にほぼ全身が晒されたためか、それとも次に来る刺激に期待してか、ゴールドの体が微かに震えた。おそらくはどちらもなのだろうが、どうせ始めてしまえば熱しか感じられないようになるのだ。問題ない。

「っ、あ」

直接ゴールドのすでに頭をもたげ始めていた自身を軽く握り、そのままぐりぐりと先端を弄ると、抑えきれない矯声が小さく鼓膜を震わせる。普段の強気で、横暴で、決して誰かの言いなりになるような器ではないこの男の、そのなんともいじらしい姿に欲情した。

「抑えるな、声」
「ふ、…はっ……やなこった、……お前に聞かせんの勿体ねえ、し」
「今さらだろう」
「うるせ、っ…ぁ」

自身をゆっくりと、しかし手早く扱き上げれば面白いくらいゴールドの体は跳ね、今しがた嫌味を吐き捨てた俺の胸ぐらを掴み引き寄せるのだから、大概この男は天の邪鬼だと思わざるをえない。ふ、と微笑みゴールドの物欲しげに揺れる瞳を見つめながら、触れるだけのキスをする。正解だったらしい。すっかり緩みきったゴールドのその顔を、俺は網膜に焼き付けた。

「綺麗だと言ったら、お前は俺を笑うか」
「死ねよお前っ…ぁ、んっ」
「そうか」
「っ…ん、んんっ、!」

根元から握り込んだゴールドの感触を楽しみながらそれを強く何度も扱けば、キスで散々煽られていた奴はすでに限界だったようで、あっという間に精を吐き出した。「早いな」と言えば「……久しぶりだからじゃねえの」と奴には似つかわしくないほどしおらしい、素直な答えが返ってきて、そんなの反則だ。

「あ、っ……」
「少し我慢しろ、力を抜け」
「無茶、言うぜ、クソ野郎……っ」

まだ外気に触れて時間の経たない、生暖かさの残る白濁を指に掬い、ゴールドの後孔に這わせる。つぷ、と指先を入れれば苦しそうに「っ…」と息を飲むのがわかった。何度も俺を受け入れているとは言え、やはりそう簡単に慣れるものではないらしい。くたりと沈んでいたゴールド自身にもう一度手を伸ばし、先端から根元にかけてなぞるように愛撫した。

「ぁ……ば、か…っ」
「何とでも言え」

弛緩したゴールドの後ろに、徐々に指を入れていく。違和感全てを取り除くのは無理だったが、前を一緒に愛撫することで多少気を紛らすことは出来たようだ。指が一本奥まで入ってしまえばこちらのもので、続けて二本目を押し込んでいく。ナカで指を掻き回したり、バラバラに動かせば、もう前には触れていないというのに、再び反応し始めていたゴールド自身が萎える気配はなかった。

「ふ、ぁ…ん……っ」
「キツいか」
「んなこと、ねえよっ…ん、あ……はぁっ…!」
「ここだな」

ゴールドの反応が大きかった所を、所謂前立腺という奴なのだろうが、そのしこりを指先で何度も何度も刺激すれば、ゴールドの口からはくぐもった悲鳴のような声が断続的に漏れ、びくりと大きく肩が跳ねる。目元にうっすらと浮かんだ涙の膜を舐めとれば、「近ェよ、っ」と、言葉とは裏腹に俺の鼻先に唇を寄せるこの男が、俺は。
(愛おしく、て。)
完全に後ろが解れたのを見計らい指を引き抜く。その行為の指すことをわかっているゴールドは、自然とその力の抜けた腕を俺の首の後ろに絡めた。へっ、と今しがたまで快感に溺れていたその顔がさらに緩み、しかし挑戦的に口許は弧を描く。器用なものだ。

「へえ……愛して、くれんのかよ?シルバー、」
「とことんな」
「そりゃ…楽しみだ、ぜ」
「減らず口が」

とは言え、散々ゴールドの乱れた姿を見ていた俺も限界で。ズボンから取り出した猛る自身をゴールドの後孔に宛がう。みるみる目を細め、俺の首を抱き寄せたゴールドの表情の艶やかさに、理性がカタン、とその錠前を落とした音を遠くで聞いた気がした。


「余裕無さすぎじゃないか?」
「お互い様……だろ、」
「違いない」
「あ、っ!」


ゴールドのナカに自身を深く沈めていく。過去の経験と先ほど丁寧に慣らしたこともあり、奴ももう苦痛は感じていないようだった。必死に俺の首に、背中に、手を回して離すまいとするその姿。たまらないな。

「ばっ……でかく、してんじゃねえ……っ」
「お前のせいだ」
「ぁ、や……はぁ、…あっ!」
「いい声だ」
「くそったれ、ん、ぁっ」

ゴールドが俺の肩口を掴む。口は悪いが俺が腰を引くたびに何とも形容しがたい切なげな目をするのだから、ある意味この男はとことん素直なのだろう。足を抱え直してより深く腰を進めれば、上体を大きく前に傾けた俺の耳元で、熱を孕んだ息を吐き出すのだから、やはりゴールドはバカだ。
奥を穿つたびに水音が響く。正しくはわざと響かせているのだが、その粘着質な音が鼓膜を震わせるたびにゴールドもまたその体を小刻みに震わせた。この音がさらに奴の興奮を煽っているらしい。人のことは言えないが。

「気持ちいいのか」
「お前、ムードの欠片も、ねえな……っ」
「質問に答えろ」
「はは、っ……下手くそ」
「ふん…悪かったな」
「ぁ、ああっ、あ!」

腰を掴んで、先程見つけた良いところを目掛けて何度も突く。拡散することなく一点を狙った快感の前にゴールドはもう声を抑える余裕も失ったらしい。俺の体内を駆け巡る支配欲。ああ、俺はこれを見たかったんだ。

「は、ぁ、あっ」
「いい眺めだ、」
「ぁ、ん…!むり……っイ、きそ、」
「イけばいい」

掠れた声で、ゴールドの耳元で囁いてやる。休むことなくガツガツと律動を繰り返し、掴んでいた奴の腰を揺さぶる。いや、何もせずともゴールド自ら緩々と動きを合わせているのだから、いよいよ俺も限界らしい。同じく奴も、口の端から涎を溢し目の焦点がおぼつかなくなる。その雫を舐め取りながら、俺は幾度となく思ったことをやはり口にせずにはいられなかった。

「は…ゴールド、」
「あ…ぅあっ、やべえ、シル……っ!」
「好きだ、」
「は、ああ…っ!」

一際強く最奥を突き上げれば、ゴールドは俺の背に爪を立てて限界まで張り詰めていた自身から白濁を吐き出した。その後を追い、俺もゴールドのナカに熱を放つ。どく、と満たされる感覚にゴールドが息をついた。その唇に、今日だけで何度目かのキスを落とす。啄むようにゴールドを求めれば、奴もまた瞳を閉じて、俺の頭を引き寄せた。どうも、ゴールドはバカだが俺を喜ばせる方法だけは本能的にわかっているらしい。それとも全て把握した上での行動か。どちらにせよタチが悪い。だがそれ以上に、愛おしすぎた。

「下手くそにイかされた気分はどうだ」
「……最悪だぜ。クソ野郎、ナカに出しやがったな」
「お前が離さなかったからだろう」
「けっ。覚えてねえっつの」
「試してみるか?」
「変態かよお前。上等だ、精々腰砕けねえよう頑張るこったな」
「確信犯が。望むところだ」
「はは、」

夜はまだまだ長いぜ?そう俺に再び唇を寄せるゴールドは、この時間を溶かす方法を知っているのだろう。愛を囁く代わりに夜をほんの少しだけ長くして、そうだ。ブランケットのように孤独を包容したこの闇夜を、俺たちは壊す術を知っている。強く、躊躇いなくゴールドの体を抱き寄せた。きっと誰も俺たちの心臓の在りかを知りはしない。



∴殉教者アダムの追悼式
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -