ゴールドに「好き」だと、そう言われるのがたまらなく心地よかった。恋人がいるならば、そのような感覚は俺たち以外の誰しもが持ちうるものだろう。しかし俺のゴールドに抱くそれは、他者とは決定的に何かが違う。それがなんなのか、あまりに漠然としすぎていて俺にもよくわからないのだけれど。
俺は素直さが足りないのだとブルー姉さんに言われた。何度もゴールドに「好き」だと言わせるくせに、肝心の俺の気持ちは恋人という肩書きを手にいれた、その時にしか口にしていない。逆にあいつを悲しませてばかりいる。俺も大概、あまのじゃくだ。自覚はあった。
しかし、ゴールドは貪欲なくせに、俺にそう言えと強要することはなかった。奴は全てをわかっていた。だから、俺は今のままこの位置に甘んじていられる。
愛を囁くのは、俺の役目ではない。口下手な俺の代わりに、何度でもゴールドはその二文字を紡いでくれるだろう。俺たちは全てを共有しているのだ。愛に生きるという言葉があるが、あれは正しくはない。俺たちは言うなれば、愛がなければ生きていけないのだ。

ゴーグルの手入れをしていたゴールドを抱きよせた。女とは違う、柔らかさなどないその手を取って、奴の首筋に顔を埋める。少しみじろいだ奴が、くしゃっと笑ったのが感触でわかった。

「どうしたよ、今日は随分と甘えたじゃねーか」
「気分だ」
「へー?なんだ、人肌恋しくなったってか?やっべ、鳥肌立ちそう」
「お前は今日も変わらず口がよく回るな」
「ゴールド様は通常運転がこれだからこんくらい普通だっての」
「それはさすがだな、羨ましいぞ。その無駄に人を苛立たせる能力」
「ついでにもう一個おまけしてやるよ」
「なんだ」
「好きだぜ、シルバー」

俺の背中にゴールドの手が回され、ぽんぽんと優しく叩かれる。全てお見通しというわけだ。

「ほら、もう一個能力あったろ?寂しがりやなシルバーちゃんを安心させる能力」
「俺限定ならほとんどの場面では使えないな」
「なんだよ?手当たり次第使っていいのか?」
「馬鹿言え」
「だろ?」

ゴールドが愛を囁くたび、俺という存在が確立されていくのがわかる。確かに自分という存在が証明されている気分になる。俺は決してロマンチストではないが、あいつ無しでは存在しえない、なんてなかなか粋じゃないかと思う。きっと腹を抱えて笑われるから、一生口には出さないけれど。
それでも、嘘偽りなくゴールド、を、



∴絶対依存
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