(R15)
月明かりがぼんやりとさらけ出す、シルバーの青白い肌に手を伸ばした。俺の考えてることを即座に理解したシルバーが首を寄せて、それに甘えてほっそいこいつの首に腕を絡めてやる。全体的に線の細い、適度に筋肉がついた体躯の下から見上げるシルバーの顔は、今にも泣きそう、だ。馬鹿やろう、そんな顔してんじゃねえ、って一喝してやりたいが、口からは引っ切りなしに言葉の断片が漏れて不可能だった。
寄せては引く波みたいに、俺をじわじわ侵食していくこの堕落は、終わりのない夜を感じさせる。
それでもいいと思った。呑まれて朝が見えなくなっても、何度でも俺達は求め合う。それは本能がどうとかの問題じゃなくて、きっと初めから決められていたことだ。
「は、っあ」
「ゴールド……」
「、ん」
俺を穿つシルバーの髪の毛がはらりと俺の頬にかかる。赤茶の髪。こいつは俺の黒髪の方が綺麗だって言うけど、俺はこっちの方が好きだ。指で掬って、唇まで運んで、気まぐれに吸い付いてみる。ふわりと香った石鹸の匂いがくすぐったい。
「っ、馬鹿、そう煽るな」
つう、とシルバーの額から汗が流れて、ぽたりとシーツに落ちた。俺の汗も同じシーツに吸収されてるわけだから、つまりこの目に痛い白の布の中でまで俺達は溶け合ってるってことじゃねえか、なんて。我ながらクサイ言葉だと思って笑いが零れた。
「っ……ひ、あ」
「ゴールド、名前を……名前を、呼んでくれ」
「……っ、」
熱い吐息が交わる。どちらからともなく唇を合わせたら、ぱちんと意識がはじけて、泡みたいに溶けていった。それでも足りなくて、足りなくて、俺を全身で求めるシルバーに応えて舌を絡めて。終わりが見えない夜にも朝は来るけれど、今だけは誰にも何にも邪魔してほしくないと心から思った。
「シル、バー」
掠れた声で呟いたら、やっぱりシルバーは、今にも泣き出しそうに顔を歪めて微笑んだ。「好き、だ。」と、俺を抱いて囁いたシルバーの熱が、伝わって。
(俺も、)
丸ごと愛してやってもいいと思った。一緒に堕ちていったのが、シルバーだったから。
∴彼は愛に怯えている