隣に並ぶ肩は、僕より少し低かった。せっかちなジュンが早足に歩こうとして、だけどふと気付いたように僕と同じペースで、同じ歩調で歩いてくれる。それが、あまりにも自然なことだったから、嬉しかった。

「ねえジュン、少し遠回りしない?」
「いいけど、なんだってんだよ急に」
「深い意味はないよ」

もう少し一緒にいたいんだ、と言ったら彼はきっとあたふたして、少し潤んだ目で僕を睨むに違いない。(それはそれでかわいいけど。)だから何も言わないでただ笑って見せた。ジュンもはにかんだ。それだけで、幸せだ。
なんとなく手を握ってみた。彼は目を丸くしたけれど、「ばーか。」と一言呟いただけだった。そうだよ、僕は馬鹿なんだ。だって今日も、こんなに君に恋してる。
空にたゆたう夕日色に染まる僕たちは、繋いだ手の平の温度を全部夕暮れのせいにしてるんだ。

「手」
「コウキ?」
「あたたかいね」
「子供体温って言いたいのか?」
「同い年じゃないか」
「そりゃそうだ」

だけど。それでも僕は、けらけらと笑ったジュンが大好きで。その気持ちは、誰にもごまかさずにいたいと思った。

「ねえ、ジュン」

また明日も、手を繋いで帰ろうね。そう言えたなら、何か答えが見つかったのかもしれない。



∴夕日に隠した恋心





正直に言えば、いや正直に言わなくてもたぶんバレバレなんだろうけど、俺はめっぽう頭が弱い。頭が悪いとかそういうんじゃなくて、俺の頭じゃコウキが考えてることの半分もわからないってこと。これはけっこう、悔しい。それに歯痒い。コウキの仕草から、視線の先から、言葉のひとつひとつから、あいつの考えてることをちゃんとわかって、そしてまるごと俺のものにしてやりたいのに。
たくさん考えた。ベッドに入ったら三秒で寝ちまうから、起きてる間ずっと考えてた。でもやっぱり答えは出ない。俺が思うに、この問いは単純で、だからこそ難しい。だってそうだろ?生まれて十年とちょっとの子供が、まさか人間について考えてこんなに悩むなんて、さ。母ちゃんもびっくりだ。
これ以上考えたりするのは無駄な気がしたから、仕方なくコウキに全部話してみた。笑いを無理に堪えてるあいつの顔がみょうに憎たらしい。

「そんなこと考えてたの、ジュン」
「悪いか!次笑ったら罰金だぞ!」
「いや、悪くないよ」

むしろかわいいからさ、なんてコウキが照れもしないで口走るから、逆に俺が口を閉じるはめになった。これだから天然のたらしは嫌なんだ!

「そうだなあ。別にわからなくてもいいことだと思うけどね」
「はあ?」
「僕だってジュンの考えてることを全部把握してるわけじゃないし」
「それはどうだか…」
「はは。だから、おもしろいんじゃない?」
「何がだよ?」
「一緒にいることが」
「!」
「…まあ、僕の思考の八割は君のことだよ」
「ばーか!」

そんなの俺だって一緒だよ!
……って言ってやるのはあと五年後に延長しよう。



∴脳まで侵食
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -