このまま遠くに行けたらなあ、なんて湖のほとりを歩きながらふと思う。今の人生が退屈なわけじゃない。だからこそわからない。ただふとした瞬間に何となく思うんだ。ああ、早く帰りたいなあって。だけど家に戻ってもなんだかもやもやして。悪循環。ああはやく遠くに行けたらなあ。おいらの何倍も頭のいいパールならわかるかもしれない。だけどパールには、なんだか言ったらいけない気がした。なんとなく、泣かせちゃう気がしたから。
小さいころは、パールはよく泣いてた。お祭りでおいらとはぐれたときも、遠足でおいらがゆっくり歩きすぎて距離があいたときも、そう、パールは一人を極端に嫌がるんだ。パールのダディが昔出ていっちゃったからかもしれないけど、おいらはその時決めたんだ。ずっと一緒にいようねって。ダイヤモンドとパールはずっと、ずっと一緒だねって。
もしおいらが一人でいなくなったら、パールはおいらを嫌いになるかな。だけどそれも、仕方のないことだと思った。だってずっと一人でいないなんて、そんなの、無理だよ。
このまま遠くにいけたらなあって思う。だっていつまでも子供のままじゃいられない。このまま遠くに行って、その先で、また会えたら。

「パールー」
「遅いぞダイヤッ!」
「ごめーん」
「ほらほら早くしろ急げってんだよ!早くしねえと漫才コンテストはじまっちまう〜!」
「あははは〜」
「って!笑ってんじゃねえよ!!!」

その時は、おいらのありのままを全部パールにあげて、パールのありのままを全部おいらが貰うのに。



∴過不足無し
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