月曜日の7限と、木曜日の1限。それは最近の俺が最も楽しみにしている時間だった。やり取りはまだ続く。といっても、ひとことずつ、少しずつだ。語ることは専ら文学の話。どうやら相手は、小説が好きらしい。太宰治、三島由紀夫、森鴎外といった有名どころから俺の知らないような作家まで様々を好むようだった。話からは見当がつかないが、文字を見る限り恐らく女生徒なのだろうと思う。最近の俺はその楽しさが部活にも反映されているらしく、思ったよりもいいデータテニスができていると思う。かりかりとノートに今日のことを書きながら、しみじみと思う。

「蓮二、調子がいいようだな」

思った矢先、弦一郎が話しかけて感心したようにため息をつく。それに俺はわりとにこやかに返す。


「ああ、少しいいことがあってな」
「ほう、何があったのだ?」

「そうだな、文学好きの友人ができた」
「む、それはいいな。」

「なんスか柳先輩?ブンガクって」

横槍を入れるようにアップから帰ってきた赤也がはてなマークを浮かべて擦り寄ってきた。…赤也は、もっと勉強が必要なようだ。

「赤也、お前は丸井と同レベルだな」
「えぇ!?嫌ッスよ俺!」
「てめえ赤也ぶっとばすぞ!」

わいわいがやがやと和やかなムードに、俺の話す文学の友人も流される。そのうち弦一郎が喝を入れて部活が再開する。赤也は相変わらず文学を知りたがっていたが。


「ねえ、蓮二」
俺の話題が薄れた頃、精市が俺に話しかけてきた。それはもうおもしろそうな笑みで。…嫌な予感がした。

「文学好きの友人、きかせてよ」
「…精市」

いたずらっ子のような笑顔で、有無を言わさずに聞いてくる精市は策士だし、俺だって逆らえない。…言うしかないのか。

「最近、奇妙な文通相手が出来た」
「へえ、文通?なかなか古風だねえ、それで…相手は?」
「せかすな、精市。相手は…知らないんだ」
「…そうなの?」
「多目的Bの俺が使う机を使ってな、やり取りをしている」
「へえぇ、面白そうじゃない」
「…精市」
「はは、悪かったって」

この男はなにかと目敏い。これは俺が精市と長い時間を過ごして実感したことだ。こうやってひた隠しにしたって無駄なのだろうと思う。いずれ知られることなのだろうが、それでも俺は少しばかりは名前も知らない彼女のことを隠しておきたいなどと思ってしまった。




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