彼女が来てから早くも1週間が過ぎた。
奇妙なくらい上手くいっている。関係も良好…である

私はこの頃彼女を観察していた。
…観察というほど顔を合わせてはいないのだが、


彼女を家において何度目かの朝、私はあることに気づいていた。苗字くんはあまり部屋からでないのだ
もちろん掃除洗濯などはやっている、食事も朝は欠かさず作ってくれている。しかしどうしたって彼女は朝ごはんを作ってすぐに部屋に篭るのだ。ちゃんと食べているのだろうか、それだけが心配になる。しかし、もしかしたらきちんと食べているのかもしれない。如何せん女性を扱うのには慣れていない、食べないくらいが普通なのだろうか?悶々と悩みに耽りながら用意してくれたフレンチトーストを咀嚼する。甘い物は好きだ。

私が食べているのを見計らって彼女はいつもちいさくいってらっしゃい、と口にする。まだこの環境に慣れていないのだろう、私と話をする時も彼女は決まって目を合わせないのだ。
それにしても、家事以外で彼女が自室から出るところを見ない。単に私と生活する時間が違うことも関係してるのだろうが。

以前、珍しく仕事が早く片付き8時には家についた日があった。帰りがいつも遅い私は基本的に夕食は仕事場の方で食べてきてしまうのでその日も夕食は糸鋸刑事を誘って食べてきていた。そして8時、シャワーを浴びて自室に篭り今回の事件の概要に目を通した。おおよそ4時間ほどだっただろうか、その間も一向に隣から物音はしなかった。そしてそのまま、夜がふけたのだった。

そんなことがあったから、私はこの頃いつも彼女を観察しているのである。

つまるところ、彼女はほとんど部屋から出ない。おそらく絵画に没頭してるのだろう。失礼だとは思ったが以前部屋を覗いた時も絵画に埋もれて眠っていたし、朝しか姿を見ないが体調が優れないわけでもないのだろう。常に、絵を描いているのだと推測する。まさしく芸術家肌というのだろうか、彼女は少し変わっている。自分の欲求がないようにも、見える。どちらにせよ、今まであまり縁のなかったタイプの人間だった。

「あ、あー…苗字くん、ちゃんと食べているのだろうか」
次の日の朝、珍しく私が口を開くと彼女は驚いたようで目を見開いていた。ム、そんなに変なことを聞いたつもりはないのだが…

「ん、…食べてる」
やはり目線は下にいっている。もとより交流が無いとはいえ、もう少し他人行儀をなくしてくれたら、と思う

「ム、そうか、いつも朝食ありがとう、助かっている」
それを聞くと苗字くんはまた嬉しそうにしていた。
(表情は相変わらず堅いが)

これからも私の彼女に対する観察は続くだろうが、今のところはきちんと食事をとってもらいたいとそう思うだけである。
そして、いつになったらもう少し心を開いてくれるのだろうと考えあぐねるのだった。


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