ちゅんちゅんと小鳥が囀る朝6時。
普通の人なら些か早い起床がこの男御剣怜侍の起床時間だった。

眉間にシワを寄せ太陽を見る。ふと、リビングの方から物音がする。いま、家には自分ひとり…否、昨日から同居人がいることを思い出した。
もしや、と思いリビングへのドアを開けるとそこには

「…あっ 勝手に、すみません、おはようございます」
やはり、彼女であった。
「いや、感謝する。いただこう」
家事、特に料理はあまり得意でない御剣にとって朝起きるとこのように料理が出来上がっているという光景は新鮮でならなかった。

「あの、御剣さんは紅茶がお好きだと聞きました、ですが、その、詳しくないので、用意はしてないんですけど…」

すみません、と小さく呟く少女。用意されてなかったことにまったく異議はないが、御剣はぐっと眉を潜めた。
「その、苗字くん、そのように気を使うな。自分の家だと思ってくれたまえ、敬語も…いらない」

気恥ずかしく目をそらしながらいうと少女、もとい名前はこくこくと心なしか嬉しそうに頷いた。
手早く片付けを済ませ、名前は自室へ向かった。扉を閉じる前、ひょこりと顔を出して御剣の名前を呼んだ。
御剣はなんだと聞くと、名前は相変わらず小さな声で「いってらっしゃい」と言った。

それを見て御剣怜侍は、誰かと住むのも悪くないと早くも嬉しく感じながら仕事場へ赴いた。





検事、御剣怜侍の帰りは遅い。いつ終わるのかも不確定だし時には0時を大きく過ぎてから帰宅になる。その日は運悪く、部下の糸鋸刑事の尻拭いをして遅く帰ったところだった。
がちゃり、と真っ暗な家のドアを開けた。しんと静まり返っているので少女は寝ていると考えた。
疲れた体を癒すため、着替えてバスルームに行こうとすると自室の隣、名前の部屋から音がした

起こしてしまったのかと身構えるも一向にドアは開かれない。御剣はコンコンとドアをノックするも反応はない、何者かが侵入しているのかとも考えた
不躾だとは思ったがそっとドアを開けて覗くと一面鮮やかな色に染まっていた。
目を見張る。部屋にあったのは数々の絵画。風景から人物、静物まで様々である。問題の少女をさがすと絵の横で眠りこけている

「ふむ…」
安心に混ざるのは一種の驚嘆。純粋にこの絵画たちがすごいと思ったのだ。芸術においてはあまり詳しくない御剣だが、あの小さな少女にどうしようもなく才能を感じていた。
イーゼルにのるカンヴァスに様々な色が踊っているようだった。

しばらく見惚れていた御剣だったが、はっと気がついて静かに扉を閉めた。

朝から感じる新鮮な気持ちに、彼はどことなく心を揺さぶられていた
「(彼女の生活するのは、悪くない)」

出会って2日の少女にさらに興味のわいた夜だった


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