ぴろりろりーん

はてさて、今日の私はいつものレジじゃなくて品出しです。実を言うと品出しはあまり好きじゃない。コンビニってころころ商品が変わるし、見た目のわりに重労働なのだ。どっこいしょ、と華の女子大生になる女とは思えない声をあげながら、必死こいて商品を補充していく。今のお客さんは4人くらい。

「………あの」

消費期限が近いものを前に出してる最中、後ろから低い声が聞こえて驚いた。コンビニで店員に話しかける人なんて稀だから致し方ない。

「はい?」
「…ハイター、置いてますか」

スウェットに黒のジャケットを着て、黒いマスクと帽子を目深にかぶった男が低い声で言った。ハイターといえば、漂白剤のあれ、だよなあ。こんなコンビニに置いてるとは思えない。

「うーん、ちょっときいてみますね」
品出しはあまりやらないから断言はできなくて、そそくさと裏に入って同期に聞く。

「鈴木くんさあ、ここってハイター置いてないよね?」
「え?あるけど」

え?あるの?
鈴木くんが足早に店に出たので慌てて後ろを追いかける。日用品のコーナーの一番下の段のすみっこに、…あった。
ええーコンビニってすごい。と思いながらそこは鈴木くんにまかせてレジに入る。


「あ、えーと327円です」
「……」

まもなくして先ほどの黒い男がレジに来て、かなり無愛想な感じでお会計を済ませた。ひどい猫背を見送ってから、鈴木くんと顔を見合わせる。


「…なんかさあ」
「ちょっと怖かったな」

だよねえ、と少しだけ盛り上がった。お客さんの陰口なんて失礼極まりないが、かなしいかなバイト内ではよくある話。いつも怒って小銭を投げつけてくるおじさんとか、超無愛想なひと、よくクレームいれてくるひと、そして、なんだか変わった人。そういったひとがだいたいターゲットになるので、例に漏れずさきほどのお客さんもターゲットになった。
まあこんなコンビニでわざわざ漂白剤とか、ないよねえ。というか近くに薬局があるんだからそっちで買えばよかったのに。うちのコンビニにそんなものがあるのが驚きだ。時代の需要に合わせた結果なんだろうけど、この場所を全部覚えてる鈴木くんってすごいな。



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