※名前変換なし
「好きです、」
正直、ああまたかと思った。まあ今まで要領よく生きてきたし、高校でもそれなりに、適当にみんなとつるんで、器用にやってきたと思う。歌島とかと遊ぶのだってちょー楽しいし、勉強するのだって嫌いじゃない。クラスの目立たないやつだって気にかけて、みんなが円滑になるようにノルマをこなしてきた。そんなだからこうやってたまーに女の子から告白されちゃったり、はするのだ。彼女いたこともあったけど、好きだったかと言われるとたぶんそうじゃない。何かに熱中できるかなと思って告白を受けただけだった、それは何でもよかった。遊びでも、勉強でも、恋愛でも。どのへん見ておれを好きなの?って思わず言いたくなる。こんな生き方してりゃ当然だけど、やっぱりどことなくおれの中身じゃなくて外、外面っていうか薄い皮の部分が好きなんだろうなって思ってしまう。まあでもほんと自業自得。
「そ、っかあ…ありがと、でもごめん、いまそういうの考えらんないんだよね」
いつもと同じ。クセでへらっと笑ってしまう。こんなんじゃダメなのは自分がよくわかってる。
大体これで女の子は納得する。ヤンチャな友達もいて勉強もそこそこできる、人生充実してるから彼女なんていらない、と勘違いしてくれる。
そうして1人取り残されてから、はああと深いため息をついて座り込む。これもお決まり。あーあ、いつまでこんな空虚な人生送るんだろ。
「あーほんと、よくねえ」
「たしかにねえ」
ただの独り言だったのになぜか返事が聞こえた。
バッと振り向くと窓を開けて頬杖をついて、こっちを眺めてる女の子。見たことは、ある。多分隣のクラスの子。
今の告白を聞かれたこと、そんでもって項垂れてるのを見られたこと。初めて学校の人に自分の内面を見られた気がして心臓がばくばくした。
「っえ、いつ、から?」
「だいたい最初から…?」
「……デスヨネ」
はあしにてーと顔を覆って、すぐいつもの外面モード。へらへら笑ってかっこわりーとこ見られちゃったと自分を下げる。また一本線を引く。
「矢口くんってさあ生きづらそう」
は?と言いたくなった。というか出たと思う。え?こんな、初めて喋ったような他クラの男子にそんなこと言う?てかちょっと腹立つんだけど。失礼すぎない?どちらかというと生きやすそうに振る舞ってない?おれ
「はじめて喋るのにごめんだけど、もっと自分出してる方がかっこいいよ」
まって、おかしくない?今見てたの超かっこ悪いところじゃない?かっこいいってなに?
「私矢口くんのことちょっと苦手だったけど、今の見てちょっと好きになったよ」
じゃね、と言い残してひらりと帰ってしまった。呆然。今までおれの人生でそんなこと言われたっけ?え?なにいまの。てか誰?かっこ悪いとこみてかっこいいってなに?なにそれ、なんかすげー嬉しいんだけど。かお、熱………
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