突然ですが、コンビニバイトの朝は早いです。私は高校生だけど、もうすぐ卒業ということもあり店長にこき使われる毎日です。朝は早いときだと6時出勤。夜だと遅くて10時半。お昼と夜で交代制ですがさっきもいったとおり私はもう暇人JKなので稼ぐしかないのです。社畜です。くそう店長、ハゲてしまえ。

はてさて、愚痴ってしまいましたが現在はその早朝6時。すごく眠いです。しかしこの時間から忙しくなるのもまた事実。今日も華麗にスーツを着こなす方々が勢揃いで入店なされます。


「いらっしゃいませー」

「おい、おまえ」


半分寝てたぐらいの勢いでもう数え切れないほど言ってきた挨拶をしていると、なぜだかそれに返事をなさる方が現れました。これにはびっくり。小学生に、「いらっしゃいました!!」と堂々と言われるよりも驚いた。重いまぶたを必死に持ち上げ声の主を探すと、

「おまえだよおまえ」

…おっと?目の前には私に負けず劣らずの眠そうな目をした青年。クリーム色のボリュームある髪の毛に主張の激しいアホ毛。品の良さそうな制服?に赤いジャケットを肩に提げている。え、なんだこの人。

「はい?」
「検事局に用がある。案内しろ」

どこから出したのかわからない…指揮棒?をビシィっと突きつけられる。ええ、本当になんだこの人。ふふん、と自信に満ち溢れたカオをする同い年くらいの男の子。それを眺めるどこにでもいそうなコンビニバイトのわたし。…なんなんだこれは。とりあえず彼は検事局に行きたいらしい。検事局って…あそこしかないよね、たしか。どうしていいかわからず一緒の担当のユミ先輩に助けを乞うと、なんともめんどくさそうに「案内してあげなよ」と投げやりに言われてしまった。ユミ先輩としてもこの人とはあまり関わりたくないらしい。ひどい。

「おい、はやくしろ。オレはもうしのぎをきらしているんだぞ」
「しのぎ…?」

それをいうならしびれじゃないのか。この高そうな制服を見る限りお坊ちゃんぽいのに、どうも頭が弱いらしい。は、はあ…と曖昧に返事をしてバイト服を脱ぎ、そそくさと店を出た。私が案内をするというのに、この人は何故か私の前を歩いている。曲がり道がある度にこちらをちらちらと見るくらいなら、私の後にいればいいのにと思う。検事局までの10分くらいを彼と一緒に歩く。ピシピシと指揮棒をいじっているのがすごく気になる。ついでにことある事に変化するこのアホ毛はなにかの生物なのだろうか。そういえば今日は腐っても平日だ。学校のない私はいいとして、彼はどうなのだろう。

「あの、」
「なんだ?」
「失礼ですが学校は…」
「ああ、心配するな!オレは一流だからな!」
「はあ、」

いやまったく答えになっていない。と思う。イチリュウだから学校に行かなくてもいいのだろうか。そんな制度があるのか、くう、なんて羨ましい。不思議そうに見つめていると、ふふんと鼻を鳴らして高らかに言うのだった。

「オレは17歳にして一流検事だ!」
「はあ、そうなんですか」
「ふふん、すごいだろう」
「すごいですね」

年下だったのか。…え?検事?検事ってあの、検事?彼は高卒もままならない中卒で検事をやっているのだろうか。不思議だ。不可解すぎる。こちらも頭にはてなを浮かべていると、いつの間にか目的地に辿りついてしまった。「ここですよ」というと、それはもう嬉しそうにしていたのでさっきの疑問はナシにする。指揮者さん(勝手につけた)かわいい。

入口付近まで行くとこれまた煌びやかな綺麗なお姉さんが立っていて、こちらを見るなり血相を変えて駆け寄ってきた。なんかハンマーみたいなの持ってる。とても…豊満な身体のお姉さんは「弓彦さん!迷ったのですか」と指揮者さんをあれやこれやと心配する。ユミヒコさんというのか。

「まあ…弓彦さんたらこのお方に迷惑をかけたのですね」
「案内してもらっただけだ!」
「申し訳ございません、失礼をご容赦くださいな」
「い、いえいえ、これくらい平気ですよ」

深々と綺麗にお辞儀をするお姉さん。ひええなんか畏れ多い。「弓彦さんお礼は言いましたの?」という言葉に、眠そうな瞳がパッと開けられた。

「そうだったな!感謝するぞ」
「いえいえ」
「ありがとうございます、貴女に法の神の祝福のあらんことを」

法の神…?と思いながらも、ハンマーでなにやらするお姉さんには、はいどうもと不抜けた返事を返す。そして何故か指揮者さんからアメちゃんを貰った。お駄賃というところか、かわいい。お姉さんはもう一度深くお辞儀をすると、指揮者さんをサポートするかのように検事局へ消えてしまった。指揮者さんが最後こちらを見て手を振ってきたので私もひらひらと振り返してサイコーマートまでの道のりを戻る。なんか、最近キャラの濃い人ばかりに出会うなあ、と思いながら。


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わりと時間軸はバラバラです


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