「あ!イトノコ刑事!」


男、糸鋸圭介が向かった先は御剣の古くからの友人、成歩堂という男の元だった。あんなにも悩んでいる御剣の姿を見て、なにか出来ないかと考えた末の結果である。がちゃり、と事務所の扉を開けると駆け寄ってくるのは成歩堂と行動を共にするちょっと奇妙な服の女の子、真宵だった。

「真宵ちゃん、久しぶりッスね!」
「久しぶり〜どうしたの?」
「実は…アンタに用があるッス」
「…え、ぼく?」

ずずずとお茶をすすっていた成歩堂は、思いがけないご指名に首を曲げる。どかどかと入りソファに座り、はああと大げさなため息をつく。真宵がどうしたと言わんばかりに身を乗り出して聞いてきた。

「なるほどくんに用事かあ」
「イトノコ刑事、なにかあったんですか?」
「なにかじゃないッスよ〜もう大変ッス」

もういちど、はああとため息をつく糸鋸をみてわりと重大な何かなんだろうと予想した成歩堂は早速要件を聞いてみる。糸鋸としても御剣の、むしろ、名前のことをどこまで話したらいいのわからなかったようで極力曖昧に話をしだした。


「実は、最近御剣検事に大事な人ができたッスけど…」
「だ、大事な人?!」

初っ端からとんだ爆弾発言である。文字通り目を丸くさせた真宵にち、ちがうッス!と慌てて修正を入れた。…まあ、大事な人という位置づけは間違ってないのだが。

「まあ、その人となんかケンカしたみたいッス」
「なんだ、ケンカなんてよくあることじゃないか」
「えー!でも、相手はあの御剣検事だよ?」
「御剣検事、すごく落ち込んでるッス…」

あの御剣がケンカとは、なかなか想像し難いことであるが、糸鋸の反応を見る限り真実らしい。はてさて、と成歩堂は顎をさする。


「うーん、まあ珍しいね」
「あんまり人前には見せないッスけど…あれは相当きてるッス」
「…でも、ぼくにどうしろと?」


ぴたり、と糸鋸、そして何故か真宵の動きがとまる。そしてもう一度、はああとため息。「そうなんスよねえ…」とがっくり項垂れる糸鋸を、真宵がいたわるように背中をさする。

「なるほどくん!イトノコ刑事を助けてあげて!」
「そんなこといわれても…」


ぼくにあの男を慰めろとでも言うのか?到底無理な話だ、と成歩堂は思った。しかし、そんなにも落ち込んでいるならば旧友として、親友としてなんとかしてやれないかとも思う。うんうんと考えて、とりあえずその"大事なヒト"についてを聞くことにした。


「イトノコ刑事、その大事な人って…?」
「…言っていいのかわかんないッスけど、なんか色々あって預かってる子みたいッスよ」
「預かってる子?子供なのか」
「子供っていってもそんなちっちゃくねッス!あんまり見えないけど高校生って言ってたッスかねぇ」
「あたしと同じくらいなの?!会いたい会いたい!」
「こら、真宵ちゃん」

真宵ちゃんを鎮めながら、また考える。あの堅物と言える御剣が預かってる子…なんとなく会ってみたいという不純な動機ができてきた。解決するかはわからないけど、まあ、真宵ちゃんもこういってることだし…と成歩堂は糸鋸に提案する

「ぼくも、ちょっと会ってみたいなあなんて」
「ホラ!なるほどくんもそうじゃない!」
「いやあでも…大丈夫ッスかね」
「こらこらイトノコ刑事!下がったものはもうそれ以上下がらないよ!」
「…真宵ちゃん、それ、自分の給料のことッスか」

兎角、このまま話を聞くだけでは埒が明かないと判断した成歩堂一行はさっそく御剣自宅へ向かうことになったのだった。


top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -