ぴろりろりーん


「いらっしゃいませー」

わたしはここらへんに何店舗か存在するコンビニ、サイコーマートでアルバイトをしています。大学が既に決まっている華の高校生。ギリギリJKです。

なんともマヌケな音楽と共にどんどん入ってくるお客さんたち。そのひとりひとりにこうやって挨拶して商品を受け取って会計して、店内の掃除だったり商品を並べたりとなかなか多忙な日々を送っています。
ちなみにいまは土曜日朝10時。ここはなかなか都会ですし近くには裁判所?やら留置所やらなぜだか法律関係の建物が連なっているのでお客さんもぴしっとスーツに身を包んだまさにできる男、やら女性やらがたくさん足を運んできます。華の高校生とはいえどバイト中はヒマなのでこうやってお客さんの観察をしていることが多いからなんとなく顔は覚えてしまう。ちなみに今日は同期の佐藤くんがインフルエンザだそうでわたしひとりです、寂しいです。


「うーん、苺…バナナ…」

足繁くせかせかと商品を選んでいるお客さんの中に、常連さんがいらっしゃいました。わたしももう何度も見たことある彼は近くの法律事務所の所長さんで、とっても優柔不断なのだと店長が言っていました。
その方はうーんうーんとレジ手前のパンコーナーにて苺ロールとバナナロールで悩んでいるようでした。はたと気づけばもう5分。ほかのお客さんのお会計をしながら眺めているのですが、ちょっと悩みすぎじゃないですかね


「ありがとうございます」

やっと決まったらしい青いスーツの方はニコニコしながらレジに苺ロールを置きました。ほほう、わたしもバナナと苺なら苺派だ。缶コーヒーと苺ロール、甘党なのかそうでないのかよくわかりません。「2点で280円です」と笑顔でいうとあちらも笑顔で「300円からで」と言ってくれました。彼はきっといい人だ

「ありがとう、苗字さん」

にこやかに、それはもう爽やかに名前を呼ばれてわたしはたいそう驚いた。え、と声を洩らすとトントンと自分の左胸あたりを叩く。…ああそうか、名札を見たのか。

「いえいえ、お仕事がんばってください」
「ありがとう、がんばるよ」

お客さんはこの方ひとりだったのでちょっとした立ち話、といったところでお店の前からひょっこりと可愛い感じの女の子が覗いていた。

「なるほどくん!おそいよー」
「ああ…じゃあまたね」
「あ、はい」

なるほどくん、さん。そういえば成歩堂法律事務所なんてところがあったなあ。もしかしたらそこの人なのか、へえ、いい人そうだしあの人に弁護されるならいい気分だなあと、なんとなく、ほのぼのした気持ちになった土曜日の朝でした。



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