煌く綺羅の夜 | ナノ


▽ 第十四章 朝に霧の立つ日 2


珍しく、そう、由騎夜にしてはとても珍しく、
夢を見ていた。

―――幼い自分と、…村の若者…そして、姉。

『姉ちゃんを、離せ!』
若者に飛びかかる。

―――どうして、こんな古い…

『どいてろ、ガキが!!』
ドサッ。相手に敵うはずがない。

―――今になってこんな…

場面が変わる…つい最近の森での出来事だ。
『大丈夫?姉貴』
場面が瞬間的に変わっていく。

――― 一体、何なんだ…

そして…
『君たちは誰一人、煌瑚さんの苦痛に気づかなかった』
…ヨーシュからの…

―――何だっていうんだ、本当に

一気に場面が変わる。
知らない場面だ。
誰かが、姉・煌瑚の手を引いて連れていこうとしている…。

―――待て!誰だ!
  
煌瑚が立ち止まり、こちらを向いた…。
何かを言っているが聞こえない。
が、その表情は今まで見たこともないくらい晴れた笑顔だった。


そこで、夢が途切れた。
由騎夜の感覚が少しずつ、しっかりしてくる…。
開けた視界の先はまだ暗い。
(・・・何時くらいなんだろ)
意味もなく身体を起こす。
「・・・誰だったんだ、あいつ・・・」
ふと、声が洩れた…。
(けど…姉貴、幸せそうな顔してたよな…。…姉貴を幸せにしてくれる人か…)
ふいに、一人の青年の顔が頭をよぎり、その後一人の女の子の顔が…。
(ヨーシュ(カレ)・・・)
そんな気がした・・・。
(姉貴も・・・嫌いじゃないみたいだし・・・)
知らず知らず笑顔になる・・・。
と、後に浮かんだ女の子のことを思った・・・。
(鎧綺も決着(ケリ)つけたし・・・俺もつけないとだめだよな・・・)
この夏…蓮花とヨーシュが杜樂に来てから、
怒涛の如く流れた日々は今までの18年間より深い意味を成していた気がする。
そう、とても深い、重い、かけがえのない日々だった。
(蓮花(彼女)を幸せにすることが…俺の生きがいになるだろう・・・)

間もなく、夜が明けようとしている…。

移設20171202




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