友達以上恋人未満
工藤菜々未(24)は、外資系の銀行に勤務している。美人で仕事も出来る(おまけにナイスバディ)彼女に淡い気持ちを抱いている男性社員も少なくなかった。 しかし、当の彼女は一人の同僚にしか目をくれず、自分が男性社員の憧れを買っているなんて思ってもいなかった。
彼女の熱情を受けているのは、有馬和幸(24)というこれまた、背の高い顔の良い男だった。
この二人の関係は"友達以上恋人未満"。
休日、二人で出かけたり二人同じ部屋で夜を明かすこともあったが、これまで一度も男と女の関係にはなったことがなかった。
「ねぇ、今夜あいてる?」
和幸が会社のあるビルのラウンジで休憩していると、菜々未がそう話しかけながら近づいてきた。
「菜々未か。今夜か?何かあったのか?」
和幸もまた、男性社員の人気を集める菜々未から想われているなんて思ってもいなかった。
「何もないけど、素敵なバーを見つけたのよ。何かないと誘ったらダメだった?」 「いや、そんなことはないけど…今夜は生憎、海藤先輩との先約があって」 「あら、海藤先輩と??そう、ならしょうがないわね。明日はどう??」 「明日は大丈夫だ」 「そう、じゃあ明日、仕事が終わったら7時にロビーで」 「あぁ、わかった」
約束の"明日"。 7時にロビーと待ち合わせをして、先についていたのは和幸だった。
「待った?ごめんなさい、遅くなって」
和幸が時計を見ると、時計の針は7時1分を指していた。
「時間通りだな、俺が早かったんだ。気にするな」
そう言った和幸が軽く微笑んだ。菜々未はそれを見て、『今日こそは!!』と秘かに燃えた。
「で、どこに行くんだ?」 「駅から車で7分くらいのところよ」
二人はタクシーの拾いやすい道まで歩き、そこからタクシーに乗って目的のバーまで向かった。
確かに、そのバーは"落ち着いてお酒の飲める大人の店"といった感じで雰囲気がよかった。マスターも50代半ばくらいで、"大人の男"という言葉が似合う人だった。
「確かに感じのいいお店だな」
和幸は注文したジンを飲みながら、そう呟いた。
「そうでしょ?他の人とくるよりもまず先に、和幸と来たかったの」 「そっか、それは光栄だな」
そういいながらも、まさか本心で菜々未が言っているとは思っていない和幸は軽く流しているような様子だった。
「和幸」
急に改まって名前を呼ばれたので、和幸は不思議に思い菜々未を見た。
「どうして彼女作らないの?」 「何だよ、急に」
菜々未の発言に笑いながらそう答えたのだが。
「質問に答えて」
菜々未は真剣な目をして、和幸を見た。 少々考えたのちに、和幸が話しだした。
「入社してから、これまで何度かは告白されたりもしたんだけどな」
菜々未は初めて聞くコトだった。
「仕事が楽しかったり…自分的に、この子だなっていう子がいなかったから。わかったか?」 「じゃあ、あたしとこうして飲みにきたりしてくれているのは、すごいことなの?」 「そういうことになるな」
菜々未は、他の女性社員より和幸に近い場所に居ることがわかって、今はこのままの関係でもいいかな、と思うのだった。
200171105[20040927] これはまだ、有麻と和幸が付き合う前の話です。 菜々未は以外に押しの弱い女だと思うんですよね。てか、和幸も鈍いと思うんですが(笑)
戻る |
|