公園
咲智と修斗が知り合ってから一ヶ月位たったある土曜日。 監督の都合で、たまたま部活が午前中で終わった修斗は、昼食後、学校近辺を何となく散策していた。それまで、平日は部活が終わると既にぐったり疲れ、加えて日も暮れていたので散策なんてすることもなく、土日も朝から夕方まで部活がある中で、ゆっくり学校近辺を散策する機会がなかったのだ。
友人とワイワイ楽しく騒ぐのも好きだが、自分一人の時間をゆっくり過ごすのも好きな修斗は一人で散策をしていた。散策を始めて四十分くらい歩いた時。 左手前方に公園が見えた。土曜日の午後。公園内からは子供の元気な声が響いていた。 公園の横を通った時、ふと、公園内に視線を向けるとベンチに一人の女性が座っているのが見えた。それは、咲智だった。 気になった修斗は、公園の中に足を進め、咲智のところへ向かった。
「 安藤先輩? 」
修斗の存在にまったく気づいていなかったらしい咲智は、驚いた声をあげた。
「 え?・・あ、大橋くん 」 「 どうしたんですか?いつもの元気がないですよ? 」 「 大橋くんこそ。どうしてこんなところにいるの? 」 「 俺は散策してたんですよ、学校周辺を。…で、先輩は何してたんですか? 」 「 え…あ、うん…ちょっとね… 」
いつもと様子の違う咲智に修斗は疑問を覚え、空いている咲智の横へと腰かけた。 そして、ゆっくりと咲智のほうを見て笑顔で口を開く。
「 何か悩みごとですか?話くらいなら聞きますよ?誰かに話して楽になることもあるし 」
修斗の笑顔は不思議と、人を惹きつけ元気にさせるのか、いくらか咲智の顔にいつもの笑顔が戻ったような気がした。
「 情けないなぁ… 」 「 え? 」 「 だって、四月に入学してきたばかりの下級生に心配されちゃうなんて 」
そう言った咲智は少し自嘲するかのように力なく笑った。
「 あたしね…さっき、フラれちゃったの… 」 「 えっ…!? 」
まったく予想もしていなかった言葉に修斗は驚いた。
「 ハハハ、だからさ、何でこうなっちゃったんだろう…って、考えてたところだったの 」
修斗には、どう声をかけていいのか分からなかった。この一ヶ月で、咲智が学校のマドンナと呼ばれ、男女問わずに人気がある姿を見てきた。 その咲智がフラれたという…。返す言葉が見つからない。
「 あ、ごめんね?何か重たい話しちゃって 」
何の反応も返せない修斗に悪いと思ったのか、咲智が先にそう口を開いた。
「 いえ…そんなことはないですけど、びっくりしました… 」
そっか…と言って、咲智はベンチから立ち上がった。
「 うじうじ考えてても意味無いわよね…もう、気にしないことにするわ 」 「 …無理して忘れる必要はないと思います…俺でよかったら、愚痴くらいいくらでも聞きますよ! 」 「 ありがとう、大橋くん 」
そう言って、笑った咲智の笑顔がやはりどこかいつもと違っていて、修斗は言いようのない気持ちに襲われた。
しかし、それが咲智に対して抱く特別な感情のきっかけだとは、この時の修斗はまだわからなかった。
20171103 [20051113] 実は、この修斗くんにはモデルがいたりいなかったり。(どっちだょ side咲智 / あなたの微笑み
戻る |
|