夜景
Buu―buu― 制服の上着の中で、サイレントモードにしてあった携帯が揺れた。 有麻は教師が黒板の方を向いてることを確認してから、携帯を確認する。
"今日、仕事終わったら真っ直ぐ迎えに行くから、遅くなるって家に連絡いれとけ"
有麻はメールの内容を確認すると携帯をまた、上着の中にしまった。
「ずいぶん、顔の筋肉が緩んでるけど?」
和幸は、会社の食堂でお昼を食べていると同期の菜々未にそう言われた。
「まぁ、明日、久しぶりに仕事休みだしなぁ」 「それだけかしら?」 「それだけって?」 「デートなんじゃないの?例のカ・ノ・ジョと」 「…まぁ(デレデレ)」 「ったく、なんであんな可愛い子があんたみたいのと付き合ってるのかしら」 「しょうがないだろ?俺が有麻の理想に合ってたっていうんだから」 「ノロケ以外のなんでもないわね…ま、久しぶりのデート、満喫してきなさいよ。っと、 あたしはもう行くわ。午後の会議の準備しなきゃ。じゃあね〜」
菜々未はそう言い残すと、さっそうと和幸の前からいなくなった。
―キーンコーンカーンコーン ―キーンコーンカーンコーン
「あれ、有麻?今日はまだ帰らないの??」 「あ、香。今日は迎え来るの」 「あ、和くん?」 「そぅ、午前中にメールきてね。きっと明日は休みなんだ〜♪」 「そっか、よかったじゃん。でも、よく続いてるよね〜7つも年上でしょ??」 「うん、でもお兄ちゃんとは11個も離れてるし…どうってことないよ」
久しぶりのデートで有麻の顔も綻んでいる。
「あ〜そ〜。ま、月曜日にたっぷり話聞いてあげるわ。じゃあ、あたしは帰るね」 「うん、気をつけてね〜」
Buu―buu―buu― 午後6時、有麻の携帯が着信を告げる。
「もしもし?着いたの?」 「裏門のとこにいるから出ておいで」 「うん、わかった〜」
有麻は電話を切り、急いで裏門に向かった。裏門を出ると、見慣れたメタリックブラックのSKYLINEが止まっていた。有麻は当然のように、助手席のドアを開け、中に滑り込むようにして乗車した。
「久しぶりだねっ!!」 「悪かったな、ここんとこ、ろくに連絡もしてやれなくて」 「ううん、お兄ちゃんも毎日すごく帰るの遅かったし、忙しいの分かってたから」
有麻が笑顔でそう言うと、和幸もようやく笑顔になった。 車は発進し、普段とは違う方向にすすむ。
「あれ?どこ行くの??」 「ん?まぁ、ついてからのお楽しみだよ」
和幸はそう言って車のスピードをあげた。
「ほら、ついたぞ」 「え〜??木ばっかりだけど??」
そう、文句をいいながら有麻は和幸にならって車を降りる。和幸は、有麻が降りたのを確認すると鍵をかり、木々の間に消えるように足を進めていく。
「ほら、おいてくぞ」
と、和幸が手を差し出す。有麻は素直に手をつないだ。5分くらい歩くと視界が開けた。
「わぁ〜すご〜〜い!!」
木々を抜けると、眼下には有麻たちが住む街が広がっていた。街との距離があるため、家々の明かりがちょうど好い大きさで光り輝き、女の子なら誰でも憧れる宝石箱のようだった。
「この夜景を有麻に見せたかったんだ…最近、ほんとに構えなかったし…」 「だから、その事はいいよ!わかってたから。でも、ありがとうね!!そこまで気にしてくれて」
そう言うと、有麻は和幸とつないでいた手を離し、和幸の身体に両腕をまわした。
「好きだよ」 「俺も好きだよ」
キラキラ輝く街を背にして二人の影が重なった。
20171103 [20040919] 有麻は高2です。和幸は24歳社会人です。シリーズ第一弾のお二人です。 ・・・多分、後から書き直します。
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