サイコラブ | ナノ



 少し意地悪をしてしまっただろうか。狂いかけの001はそう考えながら、びくびくと痙攣する少女の体の中を弄くり回していた。
 彼女は平凡な惑星ルルバで生まれ育った。とても清潔で海の綺麗な田舎の惑星だったが、彼女は天才的な才能を持っていた。
 それをキングに見られたのが全ての始まりであり、終わりだった。人々が叫ぶ間もなく死んでしまった中、彼女だけは切っても切っても死ぬことが無かった。彼女は自身の天才的な才能で、自分を不死身にしてしまっていたのだ。
 狂気を孕んだ化物にそれを気づかれたのが最期だった。彼にとっては遊びだろうが、何度も殺す真似をしてみることは勿論、毒薬や痺れ薬を飲まされ、胃液を吐き切っても尚苦しむことだって少なくなかった。
 それでも何故だろう。私はおかしな薬でも飲まされたのか? 彼女がそう自問自答してしまうのも無理はない、何故なら彼女はキングと呼ばれている彼のことを愛して止まないからだ。
 誰一人として彼に勝利したことがない、絶対服従、殺すことや少女に対する異様な執念、愛する彼女の為に俺も人間になりたいと彼が名乗りでて、その手術を施したのも彼女だ。だから、彼の肉体すらも愛していた。全て全て自分のものにできて、出来るならば……この少女のように、ねちっこく愛される立場になれるのなら。
 彼女と精神だけをすり替えることも考えた。が、それは果たして自分が愛されているとは言えるのだろうか? というかキングは、本当にこの少女を愛しているのか? 見た目が好きだからだとか、人間は弱いから四肢を全部奪えば絶対服従するからだとか、そういう考えの本から彼のマゾヒズム的本能を刺激しているのではないのか? などと考えると、到底彼女にすり替わりたいなんて考えられなくなった。多分、変わったところで痛い思いをするのには変わりないだろうし、と付け加えて。

 むしろ、彼女を殺してしまったらどうなるだろう、と考えるほうが、彼女にとっては楽しいひとときだった。
 多分キングは発狂する。ごちゃ混ぜの気持ちが暴力に表れて、惑星を三桁以上ぶっ壊すだろう。そして私のことを四桁以上殺そうとするんだろう。そしてようやく怒りが萎んだ時、私が優しく慰めてあげて恋に落ちる、なんて……。

「ああ、なんて狂ってるんだろう」

 彼女がそう言ったとき、手元が狂って少女がびくっと身体を揺らした。

「ああ、ごめんよ。手元まで狂ってきた」

 愛している男性が寵愛している女を改造する不死身の女……こんなイカれた台本どこにあるっていうの、宇宙中探してみても此処にしか無いわ。001はそんなことを脳裏でぼやきながら、キングに言われた彼女の改造手術を続ける。

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