私は混乱していた。宇宙飛行中だったのだが、不時着してしまったのだ。
 そこは水が枯れ切った大地ばかり広がっていて、そこら中ひび割れが一杯で、その間から青々とした雑草がぽつぽつと生えていた。上を見ればドーム状の黒に白い星が数えきれないくらい存在している中、ビービーだとかブーブーだとか泣きわめいてる私の宇宙飛行船に頭を抱えていた。とても静かなのが似合うこの場所でこの音は不釣り合いすぎる。黒の中に吸い込まれきれなかったブーブー音は容赦なく私の耳を劈く。いらいらしてきた。
「お嬢さん、お困りかい。」
 ふざけた笑い声がして、私は不機嫌にそっちを向いた。そこにはカエルの仮面をつけた男がいた。肌は褐色で、耳もあったし、黒髪だったけれど、なんとなくこの人は人間ではないなと感じた。
「ああ、はい。宇宙船が壊れてしまって」
「はははは、これが宇宙船だって言うのかい。」
 男の嘲りにむっとしながら、私はヘルメットの耳をぴくぴくと動かした。これは威嚇だ。
「まるで月のように丸いし、アンタのヘルメットの耳もウサギちゃんみたいだ。冥土からの使者かい?」
「違います。……ここはどこですか?」
「宇宙の隅っこさ。よくここまで来たな」
「……あなたは一人ぼっちだったんですか?」
「ああ、そうさ。」
 平然とそう言う男を、私は不思議と抱きしめたくなった。
「ごめんなさい。けど私、もういきます。ビービー音もブーブー音も、もう鳴らなくなったので。」
 いつの間にか、多分男が声を発した途端、だったかもしれない。その奇妙な警告音は止まっていた。機体からは煙だとか怪しい光も出てないし、多分すぐに旅立てるはずだ。
「あなたも来ますか?」
「いいや、いいよ。俺は。待ってるんだ。」
「さいですか」
 こんな枯れ果てた土地で、一体誰を待っているというのだろう。雨だとか、実体を持っていないものだろうか。ちょっぴり気になったけれど、私はその男に手を振ると、宇宙船をぶぅうんと動かした。あっという間に枯れ果てたその惑星は遠ざかり、宇宙の一部となった。離れたところで気づいたことがある。ここは、本当に端っこにあったみたいだ。
 それに、遠くから見てみるととても豊かな土地に見えた。私はヘルメットに映るその情景を目で舐めとった。不思議な味だった。







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