なんだよ、暗黒期って。中二病全開なそのネーミングセンスに、私は教科書を投げつけたくなった。……否、投げつけた。

「いだっ」

 例のあいつに。

「なんでいつも僕に物を投げるんですか!?」
「嫌いだから」
「なんでですか!?」
「だから見た目が無理だって言ってるじゃん!」

 数週間前の同居したてホヤホヤなあいつなら、ショックを受けておしまいだったところを、今ではすっかり、そうだけど、と繋げるのが常套句となっている。

「なんとかなりませんか!?」
「逆になんとかしてよ」
「僕はもうこれ以上変わり様がないですもん! 花さんが僕を受け入れるしかないですよ!」

 受け入れるという言葉に生理的嫌悪すら覚える。いや、百歩譲ってあいつが性格良くてお人好しなことを認めよう、だが、だが、だ。その容姿さえも受け入れて欲しいなどというのはあまりにも無理な注文で愚問ではないのか。

「……無理」

 毛布をすっぽり頭まで被り、私はあいつに背を向ける。

「……ごめん。きっとアンタ悲しい顔してるんだろうね。わかってるよ、アンタを受け入れられない私が悪い。おまけに酷いことまで言っちゃってさ。わかってるよ、アンタが馬鹿なくらいお人好しなヤツだってことくらい」

 毛布に顔を埋め、私は言葉を続ける。なんの音もしないけれど、私の背の先にあいつはいる。

「ごめん。――慣れるようには、頑張るから……」

 私がそう言ったとき、瞬時頭上に何かが通過するのが“本能的に”わかった。影が自分の元に落ちてくる前に、私は自分でも驚くほどのスピードで毛布をはぎ、逃げた。

「なんで避けるんですか!?」
「いやいやいやいや!!」

 一瞬直視したのがかなりキた。吐きそうになりそうなのを堪え、彼の言い分を聞く。

「慣れるように頑張ろうって今言ったじゃないですか!?」
「今すぐに、なんて無理に決まってるでしょ!? それにそんな無理矢理な方法取らされたら余計アンタのこと嫌いになりそう!」

 ……先はまだ長そうだな、と思いながら、私はダッシュでその場から逃走した。







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -