痛い。顔を歪める私の目の前で、人間とほぼ変わらないお弁当を食べているシャチくん。横にはバケツいっぱいの生魚があるわけだけれど、これはどうもおやつらしく、しかしお弁当よりも多いおやつってどういうことだ。
そんなことよりも、私が悲痛をあげているのは、紛れも無く乙女のあれのせいなのである。痛い。痛い。バファリン忘れた。痛い。
お弁当にもろくに手を付けずにお腹を抑えている私を見て、シャチくんは箸を止めてじっと私を見据えてきた。
ふと、足元に置いてあるバケツに手を触れたかと思うと、そこから取り出した生魚を口に放り込むシャチくん。
そしてリバース。組織がメタメタになった生魚をべっと吐き出すと、それを私に差し出してくる。
「え?」
痛みも忘れて硬直する私。あっ悪ィというシャチくんの声。
「大丈夫か? 思わずやっちまったよ」
ぽーんと口めがけて魚を放り込み、むしゃむしゃと食べながらそう言ってくるシャチくん。魚の背骨が折れる音を聞きながら、私はぼんやりと“今のって間接キスだよね”などと思いを馳せていた。
この話を、中学時代の人間の友達に話したら“ズレている”と言われた。